第2話 ツンデレ?ツンドラ?

「え、ぽぽぽランド?」


「うん、龍くんとも行きたいなって思って」


「なんで? なんで桜庭と行かないといけないの?」

 龍くんはいつもツンツンしている。なんだか人を見下すような物言いが多

 い。でもそれも可愛い。素直になれないんだね!


「私だけじゃないよ? 優成くんと私」


「その優成って奴、誰?」

 優成くんが気になるんだ龍くん。可愛い。


「気になるの?」


「いやどんな奴かなって思って」


「可愛い子だよ。今の龍くんより可愛いよ」


「可愛いって言われても嬉しくねぇし」

 不満げに言う龍くんが可愛い。本当は可愛いなんて評価されるの嫌だけど、そこを冷静に取り繕うことが出来ないんだ。だからちょっと怒っちゃう。


「ふーん」


「なんだよ?」


「龍くん。前に町内会のお祭りで的あて一位だったんだよね?」


「あんなの余裕だし、あんなの普通に出来ない奴らが劣ってんの」

 龍くんの嬉しさポイント上昇中。


「そんなこと言われたら悲しーなー。でも本当にすごいね」


「桜庭はバカだから、そんなことも分かんねぇんだな」

 と、言いつつ誇らしげなのは可愛い。


「龍くんとぽぽぽランド行きたいな」


「俺は行きたくないし」

 こっちが素直に攻めるとこうやって守りに入る。可愛い。


「あ、そうか」


「なんだよ」


「怖いんだ」


「は?」


「ジェットコースター。可愛いね龍くん」


「ば、ばか。別に怖くないし」


「でも行きたくないんでしょ? ぽぽぽランド」


「行きたいけど、お前と行きたくないって言ってんの」


「ビビってるとこ私に見られるの恥ずかしいんだ」


「は、意味分かんね」


「だって、私と行きたくないんでしょ」


「そ、そうだけど」


「分かった。そしたら誘わない」


「え」

 もうそんな見捨てられたって顔しないの!


「ごめんね。無理言って、そうだよね。週末予定あるよね。わかった」


「い、いや」


「今度から誘わない。変なこと言ってごめんね」


「ちょっと待って」


「ごめんね。じゃ」


「ま、待てよ。俺も行き」


「ん? 行き?」


「あーー、行きってやってもいいから」

 あぁもう言葉も直せない。可愛い。


「来るの? でも私と一緒は嫌でしょ?」

 はい、至高のご褒美。



「分かれよ、ばか。行くって言ってんの!」



 分かる? 分かる? この、『ばか』の可愛さ。

 この後、よく「桜庭は劣った人種だからわかんないと思うけど」が赤面付きでくっつくが今回は無かった。



「いいの?」

 ここで笑うと。


「俺もたまにはぽぽぽランド行きたいと思ってたから、ちょうど良かったよ」

 照れくさそうに鼻の下をかく。



 可愛い。



「疲れた」

 と、優成くんはあんまり遊んでいないはずなのに少しすねた様子。


「疲れちゃった?」


「うん、ちょっと」


「龍くん、ちょっと待って。優成くん疲れたからゆっくり歩こうよ」


「そんな奴、ヒーローショーに放置して遊びに行こうぜ」


「へぇ」


「なんだよ」


「楽しみにしてくれてたんだ。ありがと」


「何がだよ」


「私と優成くんとのぽぽぽランド」


「当たり前だろ!」


「当たり前なの?」

 ここから龍くんはわたわたと慌て出す。



「いや、普通に友達と行っても良かったんだけど、たまたま桜庭が行きたいって言うから、そっちに行こうとしただけで」


「なーんだ。普通に友達と行く方がやっぱりいいんだ。そうだよね。そうだ優成くんは何が食べたい?」


「ハンバーグがいい!」


「じゃ、ハンバーグ食べに行こうか!」


「お姉ちゃん。元気になったら一緒に観覧車乗りたい」


「いいね。あれあんま揺れないし」


「あれ? 桜庭。揺れるのダメとかもしかして?」


「な、なに?」


「絶叫系乗れないの?」


「うん」

 ここは素直に言って素直に謝ろう。ごめんね龍くん、お姉さん龍くんジェットコースターでいじったけど、実は乗れないんだ。と、謝罪の言葉を考えていると。


「じゃ、じゃぁ。俺が手つないでてやるから、一緒に乗ろう、よ」

 え、何なになに。ご褒美? 天からの贈り物?


 龍くんがデレた。いやさっきもデレたけど、自家発電的デレは珍しい。これは好機。


「じゃ、お願いしようかな」


「任せてよ、桜庭お姉ちゃん」


「お姉ちゃん?」


「あ、いや、え、ちが」

 慌て出す龍くん。可愛い、先生をお母さんと言っちゃう現象? まさか家ではお姉ちゃんって呼んでくれているの?


「ねぇねぇ美玖お姉ちゃん」


「何、優成くん」


「僕はジェットコースター得意だから、隣で手を握ってあげるね」

 あぁ、尊い。でも神様、ここのジェットコースターは二列なんです。どちらを選んだらいいのでしょうか?



「ともかくそこのチビ。飯食うんだろ、行くぞ」


「分かりました。チビじゃないです。優成です」

 ジェットコースターは二列なんです、神様どうしろと。

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