第83話
一方、高嶺陣営。
夏川雫は自信満々に告げる。
「――私が翔太くんと付き合うようになってから全てを打ち明けるつもりね?」
(はっ?)
全く予想していない夏川の推理に素っ頓狂な声が漏れそうになる高嶺。
「私と健吾が本物の恋人でないことを高嶺さんに打ち明けたのにも拘らず、翔太くんは付き合っていると思い込んでいたわ。つまり高嶺さんは彼に真相を伝えていないということ。どうして翔太くんを略奪する宣戦布告を彼に教えなかったのかしら」
(どうして教えなかっただと? そんなもん夏川に恋人がいると勘違いさせておかねえと私に勝ち目がねえからだよ! てっきりそれがバレちまったのかと思ったが、『私が翔太くんと付き合うようになってから全てを打ち明けるつもりね』だと? お前、美少女の皮を被ったエイリアンか何かなのか? マジで意味がわからねえぞ!)
夏川の得意げな態度に疲弊した様子の高嶺。
ある意味彼女も夏川に出会ってから被害を受けた人物の一人と言えよう。
「その答えはさっきも言ったように私が翔太くんと付き合うようになってから全てを打ち明けるつもりだからね? ふふっ、さすが高嶺さん。転んでもただで起き上がらないとはこのことかしら。つまり貴女は最後の最後に私が性悪の女だと植え付けることで別れさせようという魂胆ね? 恋人という天国にたどり着いた直後に破局という地獄へ叩き落とす。差し詰めジョットコースター作戦ってところかしら。さすがだわ」
(はっ、はぁー? 得意げに的外れなことを言ってんじゃねえぞ。ポンコツが推理を披露するならせめて眠ってからにしやがれ。誰か麻酔銃! 麻酔銃を持って来い! 私が今すぐ目の前の女を黙らせてやるからよ!)
「けれどそれに気付かないほど私もバカじゃないの」
(大バカ野郎だよ‼︎)
「高嶺さんには申し訳ないけれど、翔太くんには健吾と上手く行っていないことをアピールしておいたわ。それで彼、私になんて言ってくれたと思う?」
ポッと頬を紅潮させる夏川。そんな乙女らしい姿を見た高嶺は、
(えっ、何これ? 私はいま何を見せられてんの? 茶番? 茶番か?)
「『僕と友達になりませんか』よ?」
(だから何だよ。至ってまともな提案じゃねえか)
「ごめんなさいね高嶺さん。私はもう翔太くんの元カノじゃないの。翔太くんのお友達なの。だからこれから一緒にお弁当も食べられるし、どこかに出かけることもできるし、何だってできるわけ。ふふっ、悔しいかしら?」
(ああ悔しいね! それを堂々と小森の恋人である私に打ち明けられる化け物とヒロインレースを繰り広げないといけないことが悔しいね! あーもう、クソッ、どうすりゃいいんだよ! なんで有利な立場であるはずの私の方が追い込まれてんだよ! おかしい、こんなの絶対おかしい!)
高嶺繭香のソウルジ●ムが濁り始めた瞬間だった。
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