第36話
「彼氏じゃない? えーとごめんなさい。私の頭が悪いのかな。全く理解できないんだけど」
そりゃそうだろ! ここ数時間にどんだけ二転三転したと思ってやがる。
言っておくが第一報は小森による「夏川が
それだけでも衝撃的だってのに放課後に待ち受けていたのは夏川による「実は
はい、もうこの時点で意味不明〜! 私の足りない脳みそじゃ理解なんてできませんよ。
そんでもってとどめの一発がついさっきの「私と健吾は彼氏なんかじゃないわよ?」だ。
なんだこれ。夏川の目的も真意も謎過ぎるだろ。
「
あかん、あかん、あかーん‼︎ 頼むからこれ以上喋るんじゃねえよ!
つーかいま日本語で話しかけられているよな? ベラんディンズー語とかじゃねえよな?
ぶっちゃけもう思考を放棄させてえが……はぁ。仕方ねえ。
脳をフル回転させてやるよ。じゃねえと話が進まねえからな。
まず第一報だ。これは夏川の本心から考えても何かの間違いだろう。
そう信じ込んじまうだけの光景を小森がたまたま目撃しちまった、と。
次にそう勘違いさせるだけの光景が何かだが――。
こればかりは全く想像できねえ。まっ、痴情のもつれだと思わせるものだったんだろうよ。
例えば夏川が大橋に泣きすがる、とかな。
で、ここからが頭を悩ませるわけだが、
「実は
「
の二つを踏まえて推測してみる。
まず夏川が私と二人きりになった途端、大橋は恋人ではないと言い放った点。
これは夏川にとって大橋とのペアリングは小森に見せ付けるためだったと考えるのが妥当だろう。
その証拠に「ただの火付け役」と夏川自身が発言しているからな。
そしてその目的はまさしく「小森の嫉妬を煽るため」だったと……。
……いや、待て。納得できるよう無理矢理組み立ててみたものの、小森の嫉妬を煽るためってのがどうしても理解できねえ。
外ズラとスペックが高そうな男を小森の前にぶつけるとか、どう考えたって逆効果じゃねえか?
天才の夏川がそんなことも分からねえはずがねえだろうし……ということはまだ何か見落として――、
「――翔太くんのすぐ傍にいた高嶺さんも見たでしょう? 彼の嫉妬に歪む顔と声色を」
嘘だろ⁉︎ 何も見落としてなかっただと⁉︎ つーか嫉妬に歪む顔と声色って何だよ!
ありゃどっからどう見ても怒っていた一択だろうが! 勘弁してくれよマジで!
あーもうっ、確信した。確信したよ。
天才に変人が多いってのはこういうことだったんだな。
凡人には思いつきもしない発想をやってのけるから天才と呼ばれるわけだ。
これまで私は夏川のような努力では決して届かない人種に羨望していたが……ありがとよ。今日で憧れや嫉妬とは卒業できそうだ。こいつのような女には絶対になりたくねえ!
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