第13話
意中の異性に告白したライバルがいる。
その現実に意識を失いそうになる夏川雫は舌を噛むことでフェードアウトを免れた。
「でも小森くんは高嶺さんの気持ちに応えるつもりはないのよね?」
「そんなことないよね翔ちゃん? 前向きに考えてくれているよね?」
ぐりん。首を回し、小森翔太に鋭い眼光を飛ばす二人。
最悪のタイミングで矛先を向けられた彼は――、
(ええええぇぇぇぇっ⁉︎ ここで⁉︎ ここで僕に振るの⁉︎ いくらなんでもこの状況で答えられるほど僕は強くないんだけど⁉︎)
「おっ、お二人の言う通りだと思います……」
「「はぁっ?」」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ。
初号機パイロットのように内心で呟く小森翔太だが、その目は虚ろである。
なんと一番最初に精神をヤられたのはヒロインではなく、主人公だった。
「私の方からも一ついいかな?」
「何かしら?」
「夏川さんって翔ちゃんと別れたんだよね? 一体どういう心境で私たちの仲を割って入ろうとしているのかな?」
(うぐっ。やっ、やっぱり私たち別れたことになっているのね……信じてなかったけど健吾の言う通りだわ。ということは今の私って元カノの分際で高嶺さんの邪魔をする性悪女ってことかしら。まずいわね……早く私も翔太くんのことが好きって告げなくちゃ――)
――じーっ!
(言っ、言えない! こんなにたくさんの人の前で告白なんてできるわけがないでしょう⁉︎ だって息をするのも忘れて私の次の言動に注目しているじゃない!)
(おっ、夏川のヤツ動揺してやがんな……。さて、次はどう切り返してくるか。見ものだな)
「たっ、たしかに私と小森くんは一度終わったわ」
(あっ、やっぱり僕たちは
夏川の言葉に落ちこむ小森翔太。頭上にしょぼーんという擬音が目に見えるほどだった。
その様子がちらりと視界に入った夏川は、
(ああっ! 落ち込ませてしまったじゃない! ちっ、違うの。本当は終わったどころか燃え上がっているんだけれど……でも人前で好意を伝えるのって想像以上に恥ずかしいじゃない?)
「終わったんなら一緒に昼食を取る必要もないよね? 席を外すのは夏川さんの方じゃないかな?」
「いいえ。席を外すのは高嶺さんの方よ」
「あーもう、さすがにしつこいよ夏川さん。誰がどう考えたって――」
「――はぁ。仕方がないわね。あまり人前でこういうことを言うのは憚れるけれど、打ち明けるわ。小森くんは私の下僕をすることになっているの」
(なってませんけどおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ⁉︎)
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