第2話

「よくきた、少尉。先ず、貴様の連れてきた古参兵は哨戒に出す。古参兵に頼り自分で判断を下せないのは問題だからだ。理解できるな?」


神崎隼人大尉は背が高い。強化外骨格エクゾを脱ぐとそれがよく分かる。祥子さん曰く187cmとの事。情報軍人とは言え新人の私にはなかなかの威圧感だ。


「はっ!」


「よろしい。では突撃だ。私とデルタ小隊で敵要衝を打撃する。」


「打撃でありますか?」


「いや、デルタ小隊が遠距離から陽動するのを俺とツーマンセルで侵入し基地司令を確保する。」


いきなり、訓練にしては無理難題なんだけど。


「ナイフの用意と拳銃、アサルトライフルにはサプレッサーを付けること。移動は俺のに便乗せよ。用意は現在より1200までに完遂すること。」


15分。武器庫には走らないと間に合わないか。


「はっ!」


✝︎

105mm砲から放たれる榴弾の炸裂と共にオレンジ色の炎と鉄片を撒き散らす。デルタ小隊が砲撃を開始したらしい。


「着いてこい。」


乗り込んできた機体を停止させライフルにサプレッサーを取り付けM320やダットサイトにレーザーサイトを付けた。ライフルを構え走る。基地の裏手、ここに兵士の裏口がある事が分かっている。この基地に敵の機甲兵器は無く、近隣の基地からの到着予定が1時間後。時間は山ほどある。


ハンドサインで停止を命じ正面に裏口を守る兵士、在り来りなカラシニコフを構えた民兵から徴収された兵士の首を切り裂く。その時扉が開いて現れた兵士の眉間に扉が閉まったのを確認してから45口径弾を叩き込む。


「ナイフで手のひらのIDを出せ。」


一人の手のひらを切り裂き小さなレベルの低いIDチップを抜き取り情報を抜き取る。

苦戦する少尉に手首から切り落とし投げる。苦戦しながらも初めてにしては手早く切り出す。彼女に支給された強化外骨格に読み込ませデータ的に殺した兵士と同期させる。


「読み込ませろ通るぞ。」


手を翳し扉が電子音を奏で開く。


「ルーキー、緊張するな。俺が居る。」


青白い表情のまま固く、緊張に口を開く事すら出来なくなっている。つくづく何故この様な不適合な人間を選んだのかわからん。


「…入るぞ、急げ。時間は有限だ。」


「…はい。」


内部は僻地の基地らしく電力供給が足りず薄暗い。

だが、ここの指揮官は本国の情報軍からレイヤーワン。最上級の暗殺対象に指定されている。有能だが、狂人で民兵から兵士を徴収し虐殺や強姦を厭わないどころか推奨する犯罪者の様な女である。そう、男ではなく女なのだ。名前は劉朱亞リュウ・シュア


「ここか。構えろ。」


コンクリートを打ちっぱなしの壁の通路を通り抜け司令室に走る。未だ榴弾の炸裂する腹に響くような重低音は聞こえてくる。移動しつつ撹乱しながら撃ち込んで居る。


「スリーカウント、3、2、1。」


素早く扉を開き、中に少尉がフラッシュバンを投げ込むと扉を閉める。1人1人確実にヘッドショットを決める。そして標的の首にナイフを向け拘束する。


「劉だな?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鋼鉄を歩きし物 佐々木悠 @Itsuki515

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る