鋼鉄を歩きし物

佐々木悠

第1話

西暦2045年、改元12年。日本は再軍備を行った。3年前の台湾海峡に端を発する第二次国共内戦。早期にアメリカのCIAが介入し米軍特殊作戦軍から大規模に荒らした。荒れに荒れ、制御不能になった内戦は日本の再軍備の切っ掛けとなった。既存の陸海空の三軍に軍の諜報組織、情報軍を加えた4軍は極東地域の再安定化を名目とし国際世論を味方に付けた。

同時に国内の防衛装備の生産を行って居た企業は大きく潤った。

新採用の6.8mm口径の12式自動小銃同じく6.8mm口径の12式汎用機関銃。

12式四十五口径特殊戦自動拳銃。二脚型直立歩行戦車、12式機甲歩兵。4脚自走榴弾砲。そして軍改革の最たる物は強化外骨格エクゾだろう。


✝︎

国連東アジア再安定化任務。失策によりアメリカは主導権を日本軍へと明け渡した、日本軍を主力にインド軍に少数の台湾軍やオーストラリア軍で構成された多国籍軍。


「よく来た。神崎隼人かんざきはやと大尉。」


私の横に座る中年の佐官は、日本陸軍の大佐であり、ベナレス前線基地の司令である大山田である。情報軍の研修として情報軍の兵士40人を指揮し、現地部隊を支援する任務を与えられた。


「又か、大佐殿。いい加減にしてくれ。俺とその部下は教導隊じゃないんだ。」


「そう言うな。お前が前から望んで居た、第441小隊を配属してやる。」


苦笑しつつ前線から帰還した所で面倒事を与えられた機甲猟兵大尉に同情する。


「…分かった。」


「大いに結構だ。少尉、大尉に基地を案内して貰い給え。」


黒髪に、サイバネティックス兵を示す赤目。黒一色で5.56mmライフル弾すら弾く強化外骨格を装備した彼は情報によれば陸軍大尉、大卒の後士官学校に入った彼は2年で大尉まで昇進した事になる。拳銃は自弁のH&K社のUSPタクティカルの45口径モデル。ベナレス司令部の特殊部隊の指揮官でもある。

肩にはM8自動小銃を下げており微かな殺気を放っている。


「着いてこい。」


✝︎

「ここが食堂だ。士官用は左手、下士官兵は右手を利用する。この先は官舎だが、後で女性士官に案内させよう。」


天翔結あまとゆい情報軍少尉。彼女のプロファイルは送られている。俺は一応は陸軍大尉として活動して居るが、情報軍大尉が本職であり、直立で二足の戦闘兵器のタロスを使って破壊工作や歩いて潜入し暗殺する任務をこなしている。


「…大尉、彼女は?」


唐突に横から現れたのは俺の部下であり、副官である大咲朔良おおさきさくら中尉。俺の指揮下にある、アルファ、べータ、チャーリー、デルタの4つの中隊の内女性軍人5名のみで構成されるデルタ中隊の中隊長を務めている。機甲猟兵としては105mmセミオート砲、歩兵としてはG28E2を装備する。白髪に赤眼の彼女は、察しの通りアルビノだ。医学の進歩で、各種の弱点は解消されているが、奇異の目はゼロでは無い。俺は彼女が優秀である事を知って居る。故にそれで充分だ。


「天翔結少尉。ルーキーだ。」


因みに彼女も情報軍中尉だ。つまりこの部隊はルーキーの教育部隊であり、古参兵と送り込まれて来た要員でこれ以上の昇進させるか否かを決める審査部門でもある。


「少尉殿よろしくお願いします。」


朔良と共に立っているのは彼女の副官。扇町祥子おおぎまちしょうこ軍曹。中々の美人であり、人当たりのいい言動に騙される奴も居るが、情報軍所属の人間がまともな訳が無い。全員が全員、笑って相手の目を覗き込みながら、首にナイフを突き立て殺せる人間だ。

ルーキーはそれを理解していない。中々難しい。


「ええ、よろしく。」


士官候補生ね。情報軍の昇進は早い。かつての陸海空自衛隊の名残のある三軍と異なり完全なる新参。軍曹が数年後には少佐殿と言うのも珍しくない。そんな中、士官と言うだけで下士官兵に上段に立つのはよろしく無い。


「ルーキー、朔良の案内を受けろ。女子寮まで俺は入れん。その間に貴様の訓練を考えておく。」


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