パイロット版「これがいつもの冒険だ!」 Part.3

 オルトδの太陽であるオルトが地平線の下に沈み、夜の帳が下りた時刻。

 同じ客間でタカト達とヤージマスは夕食を共にしていた。

「この肉料理は、プレアのかな。こっちのスープはラクティネーの――」

「落ち付きなさいよ、スフラ」

「だってこんなにいろんな料理を楽しめるんだよ、落ち着いていられないって」

 とりわけ、スフラと呼ばれた筋肉質の青年は目を輝かせながら出された料理を食しており、あまりのはしゃぎっぷりにエルフィネアから注意される程だった。

「そうだ、せっかくだからお礼にボクがデザートを作るよ」

「そんな、客人に作らせるだなんて」

「気にしなくていいよ、これも友好の証だと思って」

 そう言いながらスフラが立ち上がり、自分の身体を抱きしめたかと思うと、突如体型が変化した。

 スフラは筋肉質な身体からみるみる変わっていき、胸と臀部が大きく膨らみ、逆に腰は締まるように細くなり、全身が丸みを帯びていく。身長もわずかに縮み、顔つきも端正な顔立ちから可愛さが増していった。

「………………」

 あまりの事にヤージマスは空いた口がふさがらなくなっていた。

「それじゃ、キッチンを借りるね」

 肉体の変化が終わるとスフラはすぐに部屋から出ていく。

「か、彼? 彼女? は一体……」

「スフラは惑星ギュノー出身なんですよ。ギュノー人は男女の性別を自由に切り替えられる体質で」

「な、なるほど……」

 確かに知的生命体の姿や性質は必ずしも自分や自分の出身惑星と同じとは限らない。実際にヤージマス自身とタカト、エルフィネアは酷似した外見だが、タカトの肌はヤージマスの深みのある藍色ではなく、黄色みがかっており、エルフィネアはヤージマスの出身惑星ではあり得ない銀髪だ。

 外見だけでもこのような差異があるのだから、体質が異なっても不思議ではない。だがさすがに性別が変わるなんて体質は、驚きを抑える事が出来なかった。

「ライヤ、どうしたんだ?」

 その時、パイロットスーツを着た青年――ライヤという名前らしい――が、突然立ち上がった。

「スフラのデザートはいいのか?」

「拙者は甘い物は好かん、知っているだろう」

 ライヤはそう言ってタカトを睨みつけると、そのまま客間を出て行った。

「すみません、ライヤはああいった奴でして」

「気にしておらんよ」

 しかしヤージマスは、この超銀河冒険団の事が気になっていた。

 リーダーと自称したタカトはただの一般人に見えるが、他のメンバーが個性的すぎる。一星の王女に男女が切り替えられる者、そしてここまでずっとパイロットスーツのままの者――。

 タカト曰く団員はあと一人いるらしいが、事情により艦に待機中だそうだ。紹介はされていないが、その一人ももしかしたら個性的な何かがあるのかもしれない。

 とはいえ個性的なだけなら、ヤージマスの策に支障はない。オルトδ統治局には事をスムーズに運ぶための暗殺部隊も存在する。暗殺部隊の実績はヤージマス自身が最も知っており、彼らのおかげでここまで欲しい物を収集出来たと言える。

(せいぜい最後の晩餐を楽しむがいい)

 ヤージマスは再び内心でほくそ笑んだ。

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