第2章「バウンティ・バウンティ」
賞金首と賞金稼ぎ
シキブとシャルロータが国王を殺害し、王都から行方をくらまして一ヶ月弱。
二人の首には国から多額の懸賞金が懸けられた。
もうすでに国外へ出たものと大方が予想していたが、二人はのんびりと気の向くまま移動し、今日もマルクト領内の街にある喫茶店で朝食を楽しんでいた。
そんな二人の様子を、別の建物の屋上から監視している人物がいた。
腹ばいになって双眼鏡を覗いている、赤毛でツインテールの十五~六歳の少女。
ショート丈のサロペットを着て、脇と太ももに一挺ずつ銃を装備している。
少女の名はミィティア・バッカス。駆け出しの賞金稼ぎである。
「いたぞぅ~。シキブとシャルロータ!」
ミィティアの声に、背後で貯水タンクにもたれかかっていたもう一つの人影が身を起こした。
ウメ・フジヤマ。
極東の島国出身のサムライで、ミィティアの相棒である。
眼鏡をかけた長身の少女で、腰まで届く長い黒髪。
ロングコートを羽織り、手には黒鞘で白い柄巻きの刀を持っている。
乳がとてもでかい。
「……なにをした連中なんだ?」
ウメはミィティアの横に腹ばいになって目を細め、気だるげに尋ねた。
「マルクト王国の王様を殺したらしい。けっこう立派な賞金額だよ~」
「はぁ……誇りある武士が賞金稼ぎとはな……。私も堕ちたものだ……」
ウメが額に手を当てて溜め息をつく。この大柄な女は肝が小さく、一度決めたことを後になってうじうじ悩む傾向にあった。
ミィティアは「また始まった…」と呆れ顔になる。
「誘いに乗ったのはウメちゃんだろぉ~?なんでいまさら文句言うかな~……」
「うるさい!私は巻き込まれたんだ!お前が兵学校で問題起こすから寮で同室だった私まで落第して……!」
「ごめんて」
「雑な謝罪をやめろッ!」
キレ始めたウメをミィティアがあしらっていると、食事を終えたシキブとシャルロータが店から出てきた。
「世界は不味い料理で溢れているのね!日々の食事が刺激的だわ!」
ごきげんなシャルロータを余所に、シキブは賞金稼ぎたちの視線を察知していた。
「口にソース付いてますよシャル」
シキブはハンカチを取り出して、シャルの口を拭くふりをしながら耳打ちした。
「見張られてます。二手に別れましょう」
「え!?嫌よ!シキブと一緒がいいわ!」
「いいですかシャル?これはミッションです……」
「ミッ!ション!!」
その響きに好奇心がうずいたらしく、シャルロータは目を輝かせて提案を受け入れた。
二人は「とりあえずなんか喧嘩する」ということにして、体を離した。
「冗っ談じゃないわッ!!」
シャルロータが大声を上げる。道行く人々が驚いて振り返った。
「シキブのおバカ!もう一緒にいてあげないんだからッ!」
「こちらこそ願い下げで~す。お嬢様のワガママに付き合うのはうんざり~!」
シキブがノリを合わせる。
二人はそれぞれ
屋上の賞金稼ぎたちは突然別れてしまったシキブたちに慌てた。
「お…おいどうする!?各個撃破か?」
「それじゃ片方に逃げられちゃうよ!賞金が半分になっちゃう!」
「なら我々も別れるしかないな!」
「おっけー!ウメちゃんどっちをやる!?」
「むむむ……」
ウメは顎に手を当てて唸った。
そしてしばらく考えた後、「シキブにする」と答えた。
「楽しんでる奴には敵わないからな……」
「は?なんて?」
「降りながら説明する!急ぐぞ!!」
ウメは刀を腰のベルトに固定すると、階段に向かって走り出した。
「いいか?賞金が手に入ったらお前とは絶交だからな!」
「はいはいよろしくどうぞ~」
二人は建物から降りると、ウメはシキブを、ミィティアはシャルロータを追ってそれぞれの方向に別れた。
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