第5章

第130話

第五章




 砂漠を渡って、真夜中近くに辿りついた小さな町で宿を求めた。




 部屋は、テーベの街と同じぐらいの小さな部屋だった。寝台は一つ。二つある部屋もあったが、ジョシュアはわざわざ一つだけの部屋を選んだ。




 中庭で水浴びをしていると、どんどん興奮が高まっていく。




 綺麗になった身体で、寝台へ腰掛けると、すぐさまジョシュアに押し倒された。




「もうこんなこと、二度とできないと思っていました」




 返事の代わりに、荒々しい口づけが降ってきた。ミオは「ふ……っう……ん……」と、ジョシュアの口の中で苦し気な声を上げる。




「あ、……あっ。……英国と阿刺伯国で離れ離れかと。んン……サミイ様を腕に抱くのかと。俺、怖かったです。




 アシュラフ様に王宮に召し上げると言われても、ラクダ使いとは比べものにならないぐらい楽な仕事を与えてやると言われても、全然嬉しく思えなくて、自分の心の変わりようが怖くて堪らなかったです。愛し愛されることは、こんなにも強大な力を持つものなんですね」




「ミオさん。僕たちは、まだその入り口に立っただけ。これからだよ」




 ジョシュアの唇が、うなじまで降りてきた。




「……本当、これからなのに、どうして、こんな夜中に小さな街に到着してしまったんだろうね。どうして、明日は朝早く起きて次の町に旅立たなければならないのだろうね」




 ミオの夜着を剥ぎながら、身体の至るところに口づけを落としてくるジョシュアの声はひどく残念そうだ。

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