第95話

 入り組んだ通路を何度も曲がって外に出た。




 外は、薄いオレンジ色に包まれていて、昼よりも格段に涼しい風が吹いていた。道には白い小砂利が敷きつめられ、それ以外の場所は青い芝生が引かれていた。




 芝生が枯れないのは、王宮各所に巡らせた水を庭にも引いているからだろう。振り返って白亜の王宮を見るが、視界に収まらない大きさだった。右にも左にも、ずらっと建物が続いている。




 アーチ状に屋根がかかった道を、アシュラフが歩いていく。未だにミオの手を離してくれない。




「ジョシュア様のところに戻してください。お願いします」




「駄目だ。今からラクダの厩舎に向かう。お前が乗ってきたラクダもいる。久しぶりに会いたいだろう?それに今戻ったら、ジョシュアとサミイがよろしくやってるとこを見るはめになるぞ」




 ショックで足が止まりそうになるミオを、アシュラフが強引に引いていく。




 王宮のラクダの厩舎は巨大だった。行けども行けども、ラクダがいる。




 房に入れられている見知ったラクダを見て、ミオは首にしがみついた。




「北斗星号っ」




 泣きそうになるミオを、老いたラクダは首を捻って鼻先をこすりつけ慰めてくれた。




「お前、随分綺麗にしてもらって」




 毛をカットされ、蹄の形まできれいになっていた。その隣には、十字星号がいて、若い彼女は北斗星号に盛んにじゃれている。




「お前たちは、仲良くなれたんだね。……よかったな」




 数日前まで自分とジョシュアもこうだったと思うと、悲しみで喉が詰まる。

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