第79話

 水を飲み続ける十字星号の背中を撫でていると「ワアアアアッ」という歓声を街から聞いた。




 街全体が震えるほどの音量だ。




「この声、サライエでも聞いたことがある。きっとパレードだ!!十字星号、とうとう追いついたよ!ジョシュア様にも北斗星号にも会えるよ!」




 パレードの行きつく先で、きっとジョシュアに会える。




 十字星号の手綱を握り、街の中に入って行った。異国の人間も入り混じって、イリアの街の人口は、おそらく通常の数倍に膨れ上がっている。道端に人が溢れかえり、建物の窓という窓から人が手を振っている。




 大きな通りまで出ると、一歩も前に進めなくなった。ここから人の流れが変わっているようだ。




 イリアの街は巨大で、東西南北に出入り口がある。ミオがいるのは、南の入り口だった。パレ―ドは東の入り口から出発したようで、ちょうど目の前を担ぎ手に担がれ兵士が脇を固めた輿が通り過ぎて行く。




「……あの方が『白の人』」




 輿には薄い幕が被せられている。中に人が座っているのがうっすらと見えた。たまにそこからすっと白い手が出され、イリアの民に向かって振られる。その瞬間、歓声は建物を揺るがす地鳴りに変わる。




 陽が沈み、空はオレンジと青を混ぜたような色をしていた。




 ミオは、同じような肌の色をした、しかし、自分と真逆の地位の人物が乗る輿を黙って眺めた。




 不思議となんの感慨も沸いてこない。




 今、ミオの頭の中にあるのは、ジョジュアのことだけだからだ。

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