第66話
「奴隷らしく仕事をしよう」
旅の契約期間が終わるまで、テーベの街でゆっくりするとジョジュアは言ったのだ。だとしたら、この宿は押えておかなければならない。
旅の荷物を開け、鍋の中に入れてあったカードゲームの分け前から紙幣を数枚引き抜いた。
自分のとジョシュアのサイティも手に持ち、一階の宿屋の受付に向かう。
とりあえず一泊分支払おうとしたが、あいにく女将は不在だった。
中庭に出た。
井戸から水を汲んで、サイティを洗い始めた。自分のを洗い終え、今度はジョシュアのを入念に洗う。
ポケットの中に手を入れて裏地を出そうとすると、何か入っている。取り出すと、しおれた青色の草の束だった。
「これ、匂い消しの草だ」
たぶん、砂漠キツネの巣穴探しの際、見つけてポケットに忍ばせたのだろう。
自分の言ったことを覚えていてくれたのがうれしくて、サイティを抱きしめて「ジョシュア様」とミオは泣き叫んだ。
「感傷に浸っているところ、声をかけて悪いが」
背後から男の声がして、ミオは泣き顔のまま、振り返った。
青いサイティを着た大柄な中年男が立っている。あまり、顔色は良くなかった。
「私はタンガ。お前の主人の案内を務めた者だ。何度かすれ違っているからわかるな?」
「ジョシュア様は?ジョシュア様に何かあったのですか?」
ミオはジョシュアの身に何かあったのだと直感した。
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