第54話
続け様、上半身の大小の古傷に唇を落とされ、ミオは身体をよじった。
「俺の肌なんて汚いし、おまけに青白くて気持ちが悪いだけです」
「月の光と一緒で綺麗だよ。ほら」
ジョシュアは窓辺を指さす。窓からは、柔らかな白い光を放つ三日月が見えた。
ミオは、何だか苦しくなって胸を押える。
ジョシュアに優しく接せられれば接せられるほど、息苦しく、そして、全てを否定したくなる。
「これまで沢山、色んな人に罵倒されてきました。寄るな、不吉だ。汚らわしい。何で、生まれてきたんだと言われたこともあります」
「大切な人を、褒めたり、慰めたりするのは普通のことなんだよ。ミオさん」
「その普通というものを知りません。だって、俺の日常は……」
ミオは身体を震わせながら、いきり立っている自分の雄に手を伸ばす。そして、握りこんで動かした。
気づけば、薄く笑っていた。
「お客を引いてくることができなければ、罰としてこうやって自慰を披露させられ、『白』のくせに性欲があるなんて浅ましいとけなされ、笑われるのが当たり前で」
ジョシュアに絶対に知られたくないことばかり、口が勝手に言葉を紡ぐ。
でも、言わないと苦しくて、自分という存在が弾けて粉々になってしまいそうだった。
床に突っ伏して大声で泣きたかった。
絶対、彼は、自分に深く失望する。
そして、興味を失う。
恋人になって欲しいなんて、言ったことすら綺麗さっぱり忘れて、国に帰るのだ。
ジョシュアは、険しい顔をしてミオの手を止めさせた。
「今、君は嫌な部分をさらけ出して、僕に嫌われたと思っているだろう。けどね、潤んだ瞳や上気した頬、それに、糸を引くほど充血したその部分を見せつけられるのは、僕にとっておあづけを食らっている犬の気分なんだよ」
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