第53話

上を向き、細い糸を垂らしたミオの下半身が露出した。


「見ないでくださいっ」


 ミオは、叫んでその場にしゃがみ込かけた。


 その瞬間、ジョジュアに右手首を握られる。


 慌てて、空いているもう片方の手でその部分を隠す。


「これは、滋養剤のせいで。その、あの、とにかく違うんです」


「だから、あんなの飲んじゃだめだと言ったじゃないか」


 ジョシュアは、下穿きがミオの体液で汚れるのにも構わず、ミオを抱きしめてきた。


 そして、脇腹に手を伸ばし擦ってくる。


「オアシスで介抱した時から、君の身体のことが気になっていた。あちこち、傷だらけで、かわいそうで。ここは、何度も鞭を当てられた痕かい?」


 ジョシュアが指でなぞる部分には、指ほどの太さの黒い線が走っていた。


「治していこうね。西洋には、古い傷痕にも効くよい薬がある。せっかく、綺麗な肌をしているんだから」


 そう言いながら、彼は跪ずく。


 わずかでも、身体を動かしたら、浅ましい部分が当たってしまいそうでミオは恐怖した。


 ジョシュアは、顔を近づけてきた。


 ミオは壁にぴったりと身体をくっつけて、「どうかお止めください」と懇願する。


 寸でのところで、首は傾けられ、脇腹の傷に唇が当てられた。


 何度も叩かれ、血を拭いたその部分の皮膚は盛り上がり、もう痛みすら感じなくなっているのに、ジョシュアに触れられたとたん、痺れるような甘い感覚が突き抜けて行った。


「ジョシュア様。御勘弁を。もう……やめてっ」

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