第35話
何軒か宿を巡って、ようやく一部屋だけ宿を取ることができた。部屋は日当たりが悪く、朝だというのに薄暗かった。
部屋の真ん中に、寝台が一つ。
真正面に窓。
左手には、古びた机と椅子がある。
部屋の右端に、ジョシュアの荷物とミオの荷物を置けば、空いているスペースは左手前しかない。ジョシュアは「二日ぶりの寝台だ」と言って腰掛けた。身体の重みで、ギシッと軋んだ音がする。
「この寝台はなかなか硬い。ミオさん、我慢できる?」
荷物の整理を始めていたミオは、手にしていた皿をあやうく落としかけた。
まさか、一つの寝台を共に使おうと?
天幕の中で一緒に眠るのとは訳が違う。
思わず早口になった。
「俺なんかに気を遣わず、一人でお使いください。きっと、その方が熟睡できます。俺は、北斗星号を預けた厩舎で寝ますから。藁もあって寝やすいですし」
すると、ジョシュアがふさぎ込む。
「ミオさんは、僕よりラクダと一緒に眠る方が好きか」
「ち、違います。お許しくださるなら、部屋の隅で寝かせていただきます」
誤解を解きたくて、にじり寄る。
目の前に立つと、ジョシュアが腰を掴んでくるものだから、突然の接触に「はぅっ」とおかしな声を上げてしまった。
ジョシュアが笑いながら言う。
「改めて申し込むよ。今夜も、僕の隣りで眠っていただけませんか?」
「だ、だから、何故です??」
「君を腕の中に抱いて眠ると、心地いいんだ」
「俺、ガリガリだし。肌なんか、太陽と砂のせいでガサガサだし」
「気にしているなら、今すぐに栄養のあるものをたっぷり買い込んで、君に与えようか?そのあと香油を買ってきて、身体の隅々まで擦り込んであげようか?」
「けけけ結構です」
またジョシュアのからかいが始まった、とミオは思った。
この寝台に寝そべって、ジョシュアに香油を擦り込まれている裸の自分を想像してしまい妙な気分になる。
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