第2章

第24話

第二章


 今朝の起床は、随分ゆっくりだった。


 薄暗いうちに起きなければならないミオは、いつも通り目覚めてしまったが、客引きに出ないで横たわっていられることが幸せだ。


 すぐ隣にはぐっすり眠るジョシュアがいて、ブランケットの下で規則正しく胸を上下させていた。


 ずっとされていた腕枕に気づき微笑んだ。


 うれしいのに悲しい。一泊二日の旅は今日で終わる。ジョシュアとの夜もそして朝ももう巡ってこない。


 誰かと離れがたいと思うのは、初めてだ。


 しばらくじっとしていると、ジョシュアの腕が動いた。寝返りを打ちたいのかもしれないと頭を外すと、ごろりとミオに背中を向ける。


「ミオさん?」


 間延びした声が上がり、ミオは「ジョシュア様。おはようございます」と寝返りを打った方向に回り込んだ。


「おはよう。日の光が随分眩しいね。随分眠ったんだな」


 ジョシュアが、眩しそうな顔をする。


「慣れない砂漠の旅で、お疲れになったのでしょう。ラクダの背に乗るのが初めてですと疲れますし、酔う方もいらっしゃいます」


「朝から、もう旅の案内人の顔だ」


 ふっと、頬を撫でられた。ジョシュアの唇に目がいき、一瞬で昨夜の出来事が蘇ってきて、ミオは膝立ちのまま後ずさる。


「昨夜は、すすすすみませんでした。ご迷惑をおかけしました。お蔭でこんなに元気です。目覚めて、すぐにお礼を言うべきでした。至らなくて申し訳……」


「仰々しい謝罪もお礼もいらないよ」


 ジョシュアは、伸びをしながら起き上がった。


「すぐに朝食になさいますか?それとも先に飲み物を?」


「とりあえず、水浴びでもしようかな」


 日が昇り、天幕の中は汗ばむほどの温度になっていた。


 水浴びには、うってつけな時間帯だ。


 ジョシュアは浜辺を歩きながら夜着を脱ぐと、全裸になってザブンとオアシスに飛び込んでいく。

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