第14話
厩舎に北斗星号を入れ旅行社に戻ると、店の中で店主がのんびり長椅子にもたれて団扇を仰いでいた。大陸の東の果てにある国の扇子は、欧羅巴の旅人の忘れ物だ。奴隷から稼ぎのほとんどを巻き上げている店主でも、異国の品は高すぎて買えない。
「客は、引いてこれたのか?」
店の中に一人で入ってきたミオを、店主は長椅子に寝そべったままじろっと睨んでくる。
たくさんの人に声を掛けてみましたが、なんて言い訳したら怒りに火を注ぐとになる。ミオは「申し訳ありません」とただ謝る。
店主は、顎で壁を指した。ミオは、サイティを脱ぎ壁際に立った。
「ウィマもフィティも他の奴らも、客を掴まえてきたぞ。なんでお前だけできないだ?無能だからか?最下層奴隷だからか?それとも『白』だからか?」
「全部だと……思います」
鼻で店主が笑った。
とっととやれと怒鳴られる前に、ミオは急いで下穿きを腰骨のあたりまで下ろした。年齢には見合わない小さな雄が、ミオと同じくうなだれて床を見ている。
「滋養剤を飲んでいないのか?いつもはガチガチにおっ立てて、汁まで零しているくせに」
「昨晩、飲んだのですが、まだ効いていないみたいで」
「今飲んでいるのが効かなくなったら、お前にやる滋養剤はないからな」
滋養剤がなければ、灼熱の阿刺伯国で奴隷は働けない。その上、『白』は身体が丈夫ではないから、なおさら滋養剤が必要だった。
それを与えないと宣言されたのだから、ミオのその後は決まっている。
手のひらにつばを付けて、握り込んで上下に動かす。根元を少し強めに握って素早く刺激を繰り返せば、達するのはたやすい。
この行為は、四年前、拾われてすぐの頃に店主に無理やり覚えさせられた。
客を引いて来ることができないお前への罰だと言われ、ミオは従ってきた。
「もっとゆっくりやれ。声も出すんだ」
命令され、仕方なく動かし方を変える。鈴口から出る透明な液を、先端の丸い部分に指先でこすりつけながらゆっくり動かすと、ぴりぴりと腰のあたりまで痺れ呼吸が乱れる。
刺激によって硬くなり、立ち上がってきた雄を見て店主が言った。
「『白』にも性欲があるなんて、ぞっとするな」
いつものセリフだが、毎回ナイフで胸を突かれたかのように心が痛む。
店主は、傷つくミオをせせ笑った後、長椅子から起き上がり傍に来て頭上から見下ろす。
「んんっ、」
「何だ?見られて感じているのか?本当に、浅ましいなあ、お前は」
見上げれば、店主がミオの頭上の壁に手をついて、汚いものを見る目つきをしている。
「まだいくなよ?」
「出ちゃっ、います」
「我慢しろ」
「……あっあ……もう―――」
片手で先端を覆う。しかし、勢いよく溢れた液は指の隙間から飛び出し、店主のサイティを汚した。
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