19

そんな僕を冷静れいせいな目で観察かんさつしていた者がいた。


小さな保護者ほごしゃナビだ。


ナビは少女のひざ陣取じんどり、

少女を見上げ助言じょげんを始める。


警告けいこく

 となりに発情した思春期ししゅんきけものがいる」


 ダイアローグが崩壊ほうかいしている!


だが少女はその助言じょげん真摯しんしに受けとめ、

僕を見つめていた。


『発情してるの?』


拙速せっそく ぎる質問に僕は火照ほてる顔を背向けると、

うそぶいた。


「きっ、気のせいじゃない」


冷静とは言えない語調ごちょうれ出ていた。


動揺が気まずい沈黙を永く感じさせる。


「その、君の髪の色変わってるね」


『変?』


「いや、かわいいなと思って」


『かわいい?

 それは生殖行為せいしょくこういがしたいと言う事?』


飛躍ひやくしすぎだ!?


「いや恋愛対象くらいで・・・ 」


了承りょうしょう。 残念ざんねん


そうつぶやくと少女はまた外の景色けしきながめていた。


残念?


残念と言ったのか?


残念の意味は確か・・・


脳内の電子辞書が急速にその単語を検索する。


思った様にならなくて残念だ。悲しい。

不憫ふびんだ。喪失そうしつ。残念な人。


少女の横顔がよぎる。


胸の鼓動こどうが速まっていた。


何を考えている。

勘違かんちがいで痛いやつになりたいのか!?


だが少女の単刀直入たんとうちょくにゅうなこれまでの言動げんどうからは、

そうは思えない。


いや何考えてんだ俺。

冷静れいせいになれ。


冷静だ!冷静にクールビズ。


冷静さを失えばナビの術数じゅつすうにはまる。


「所で君のしゃぺり方、変わってるね」


少女は無機質むきしつに俺を見つめつぶやいた。


いやなの?』


「いや、嫌じゃないよ。

 かわいいよ。

 けど目立つかな」


『嫌ならめる』


「止めれるの!?」


『分かった善処ぜんしょする。


 ごめんなさい、お兄ちゃん』


俺、そんなプレー強要きょうようしてないよ!?


それを見てナビがつぶやく。


変態へんたいだな」


少女がそれに応えた。


『ソウヤは変態』


どこで間違まちがえた!?


俺の思考しこう暗雲あんうんうずみ込まれていた。



 

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