12

いつのにか僕は彼女に、

外の世界をらし見ていた。


「君達はアウトサイダーなのか?」


少女はしばし思案しあんすると重い口を開いた。


『そう、アウトサイダー』


ふたた沈黙ちんもくおおう。


本気なのかその真意しんいわからず彼女を見る。


もくしたまま僕を見つめる目が、

なにかを待っているようで、

それが信実であるとさとらせるのに充分じゅうぶんだった。


大丈夫だいじょうぶ。 僕は君を通報つうほうしたりはしない」


少女はこまったように僕を見つめた。


『その心配はしてない。

心配はない。むしろ・・・ 』


少女の固い表情が僕をぬく。


先をうながすように、僕は自然とつぶやいていた。


「むしろ・・・ 」


そんな僕を見据みすえ彼女は答えた。


『むしろあなたの方が今は不法侵入者アウトサイダーよ』


考えた事もかった答えに言葉につまる。


僕が不法入国者アウトサイダー


都市に住む住民が、自分がある日突然とつぜん

不法入国者アウトサイダーになる事を考えるだろうか?


僕は本当の意味で、

不法入国者ふほうにゅうこくしゃ立場たちばでものを考えてなかった。


なぜなら不法入国者にはなりえないからだ。


移住権いじゅうけんゆうした市民だから。


僕は不法入国者の立場で

人権を考えた事がなかった事にかされた。


人権を考えた事が無いわけでは無いが、

厳密げんみつにはその人権じんけんも自分の立ち位置いちから見ていた。


「ちょっと待って・・・ 」


ちょっと急過きゅうすぎて頭の整理せいりが追い付かない。


「つまり僕は異次いじげんまよい込んだ

 子猫って事?」


『子猫じゃないと思う』


少女は真面目まじめに僕を見つめそう言った。


『それに異次元でもない。

 並行へいこうかいよ。

 もしもで出来た世界。


 IF《イフ》もしも・・・

 もしもあの時、あの決断をしなければ。

 もし歴史が変わっていたら。

 もし・・・ 


 もう1つの歴史の分岐点ぶんきてん

 パラレルワールドとも言うわ 』


並行世界へいこうせかい

パラレルワールド。

もしもの世界。


僕の常識じょうしきが、

価値観かちかんが音をたててくずれていくのを感じた。


まるでおとぎの国の主人公になった気分だ。


もし僕が大人だったなら、

頭から信じないであろうワードがならんでいた。


 

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