─2─

閉 鎖 都 市


同時に体がゆうられ、

それにどうして車内の電灯でんとう一斉いっせい明滅めいめつし始めた。


数度の轟音ごうおんれがおさまるころには、

あたりはみみりするような静寂せいじゃくつつまれていた。



放心ほうしんしたように、静寂せいじゃくに支配された世界。


明滅めいめつかえ電灯でんとうだけがそのどうつたえていた。


やがてそのどうも完全にみ、

辺りは常灯じょうとうしゅだけがかぶ、

闇に飲み込まれていった。


時が止まったような空間で動くものはなかった。


ただ1つ、小さなシルエットをのぞいて。


静寂せいじゃくに支配された空間にただようように、

1人の少女がかびがった。


非常灯のあいをぬうようにたたずむ少女。


その少女はまるで、

世界から隔絶かくぜつされたかのように浮かんで見えた。


銀髪ぎんぱつかざるマウスがた耳飾みみかざりに、

ディープブルーのひとみ


小さな身体からだにふつりいな、

金属製のバイザーが印象的いんしょうてきだった。

(もとおおような形の、鉢巻はちまきがたのつばのいメット)


そのあいからのぞいた瞳が、

ねつびたようあつく、赤くきらめいていた。


僕はそのねっにあてられたように、

そのひとみから目がはなせなくなっていた。


少女はそんな僕の存在そんざい

認識にんしきしていないように、

僕の前を通とおりすぎて行ゆく。


肩に乗せたリス型ペットロボが、

チラリと僕をいちべつしたように感じた。


それはあるしゅ警戒心けいかいしんをのせて。


ろんロボットに感情などあるはずいのだが。


あるしゅ羞恥しゅうちが、

そう見せているだけなのだろうが。


そんな客観的きゃっかんてきこうは、

あらためてあたりの状況じょうきょう観察かんさつさせるのに、

充分じゅうぶんだった。


ふと向かいに座ったコートの男の、

しんせんに気づかせたのだ。


正確せいかくにはそのせんは自分にではなく、

終始しゅうし少女に向けられていたのだが。


そのせんからは、

あるしゅあくようなものを感じさせた。


おもむろに男は立ち上がり、

コートの内ポケットに手を入れ、

そのまま少女の後を追うように歩き始めていた。


その姿すがたしんそうさせる。


いつのにか僕は男のあとを追っていた。




          ─2─

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