世界は今日も安全で隔離されている

─1─



僕がこの世に生を受けて15年。



世界は均等等価きんとうとうかの名のもとに、

調和ちょうわたもたれていた。



へいてき平和。




閉鎖都市ディザイア。




かくされた菌室きんしつ箱庭はこにわ



それが僕が知る世界のすべてだった。




そう僕が育った世界は、

定調和ていちょうわでみたされあふれる。



そこに僕の場所ばしょは無い。



秒単位でまったスケジュール。



ロボットのれの中で息をひそごす日々ひび



息苦しさにまいを覚える。



そう感じるのはたんなのだろうか?



そんな現実が、

なんだかありづくりに見え気持ち悪いのは。



通学電車の中でられる人々をながめながら、

そんな事を考える。



いつも決まった時間、

決まったせきすわる人々。



この世界はびっくりするほど凡庸ぼんようで色がない。



たい忘却ぼうきゃくされる日々。



車内に設置せっちされたディスプレイからは、

お決まりの広告動画こうこくどうががもれ出していた。



変化ないリズムで日常にちじょうきざむ広告動画。


目のはしとらえたその画像に、

一瞬ノイズが走って見えた。



またたきほどの一瞬せつな


そこにしつ人影ひとかげうつって見えたのだ。



目をこらす。



暗闇にはいされたディスプレイの奥に、

画面を凝視ぎょうしする自分の姿がけて見えた。



画面からは何事なにごともなかったように、

いつもの広告動画が流れていた。


僕は軽いまいおぼえ画面から目をらす。



単調たんちょうかえす動画がふたたび時をきざんでいた。



      無為むいな時間


       いつもの光景


    変わる事の日常にちじょう



僕はあくびをみ殺しびをしかけた。


次の瞬間しゅんかん

唐突とうとつに何かにぶつかったような衝撃しょうげきと、

擦音さつおん車内しゃないひびわたった。



金属きんぞくきしむかなり声。



リンゴがたの赤いかわリングが、

一斉いっせい軍隊行進ぐんたいこうしんようれていた。




           ─1─

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