第10話 てまりうた -あやはのせかい-
ひとつとせ〜、
てまりうたがきこえる。
子供たちが集まって、まりつきをしているみたいだ。
楽しげな笑い声や歌がが、かすかに風にのり遠くからきこえてくる。
いつからか、もうわからない。
世界を、そこにすむひとたちを愛するようになったのは、いつからだろう。
稲荷の神に帰依して庇護に入り、神使、神の司としてこの地を見守り、世界を治め、ひとたちの生活を見守り、看取り、共に
このわたしの世界のひとたちは田畑の収穫を終え、ひとたびの休息の季節へと向かってゆく。
子供たちにはそんなことは関係ない話で、
父母を手伝い、遊び、日々が過ぎてゆく。
わたしにとっても懐かしく、そして胸の暖かくなる遠き日の思い出だ。
今の、
日々を楽にして、時間を得るために人は進歩して、楽しいはずの生活を手に入れた。そのはずだ。
でも、単純だった日々は複雑になり、ひとたちは困惑して、
手に入れたはずの時間に、逆に使われているように日々に追われている。
なんだろう。
現世は修行の時でもあるけど、無用な苦しみは必要無いはず。
荒ぶる
昔も今もそう変わりはしないけれども、でもそんな出来事を多く感じるようになった。
世界は、崩れつつあるのかもしれない。
歌声がきこえる。
からすといっしょにかえろうか〜。
思ったよりも長く、考えごとにふけってしまった。
日の暮れる、わたしの世界から現世の地へ戻るための鳥居をくぐる。
「さて、みんなはどうしているかな?」
そんなひとりごとを呟いて、
わたしの仲間たちのことを想い、わたしわ口元をゆるめる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます