第9話 ライトノベル日記 -らのべ日記-より、『おれは狂っているかもしれない』再生版

あの娘とケンカした次の日、


早朝のTVのニュースで報道があった事故。

あの娘の名が流れた。


北からのミサイルの都市部落下など、

事件の時には、あれほどけたたましく頭の中で鳴った警報音アラート

彼女の死には黙ったままだった。


まだ、謝ってもいない。仲直りも、していないんだ。


  −◆◆◆◆−



「おい、○○、告別式あいつのとこへは?」


「行かない」

行っちまえよ、かずま。


「おまえ…。行かないと後悔するから、来い」


「…行かない」

行っちまえって。


かずま、おれはお前と話したくないんだ。


誰とも話したくない。


話せば、考えたくないことに気づいてしまいそうだから。


「おいっ!!、○○…?」


乱暴に肩をつかまれ、かずまの方を向かされた自分が泣いていることに、かずまが初めて気づいて口ごもる。


涙でにじんだかずまが口ごもる様子を見て、


気づいてしまう。あの娘はもういない。


やはりあの娘は死んだんだ。


もうどこにも、

みゆきはこの世界中の、どこを探しても居ないんだ。


なぜだ!!なぜ!!、

なぜあの娘が死ぬんだ。


おれはまた、あの娘の居ないこの世界で、

ここで生きなければならないのか。


ひとりだと気づいた、この地獄で生きなければならないんだな、ひとりで…。



「こんな世界いらない」

記憶の封がほころび、そんな言葉が漏れ出す。


自分はかずまの前から消え、自らの世界へと移動する。



…何もない空っぽのホール。今の自分そのもの。


足元に広がる巨大な魔法陣。


…おれは、何をしていた?


TRPGのキャラクター、

おれの創造物をあらかた、このTRPGの世界へ解き放った気がするが…。


後は何をした…?

あの娘を助けなかったのか?


どれくらい時間がすぎたのだろう?

わからないが、それすらも意味がない。


この世界の中なら自由にできる。

時間を止めることも、進めることも、巻き戻すことも。



「猫又。来い」

虚空へ呼びかける。


そして、ここに猫又を呼ぶ。


現れた猫又は、戸惑い、目をしばたきながら辺りを伺い、

そして、おれに気づく。



「○○、みんな心配してた…。

せめて座敷ちゃんには話してあげなよ。

「女の子泣かすのは最低だよ」


狂いかけの頭で、座敷わらし、稲荷狐を思い出し、

精神こころの正気の部分が、ちくりと痛む。


けれども、謝る言葉が出ずに、

おれの口は、別の言葉の紡ぎ出す。


「猫又、頼みたいことがある」


「断ったら?」


「命令する。お前の契約者として」


おれの言葉に腹を立てず、ふっと笑う猫又。

「思い出したんだ(笑)

「いいよ。あたしはあんたの契約者メイドだし、あんたの下部しもべなんだから(笑)」



「…猫又、

おれは何回、同じことを繰り返してる?」


「1万1023回」

猫又はそう即答した。


  −◆◆−


「あたしの知っているだけだよ。

「さっきあんたのやってた事、ミケちゃんを事故から助けたくて繰り返した、短い時間遡行。あれは数に入れてない」


憂い顔の猫又。

「やっぱり成功しなかったみたいだね。おそらく100回くらいは繰り返したと思うけど」


「あたしの知ってる、あんたが転生した回数、1万と1023回。

「あの娘と結婚した回数10回、子供が出来た回数3回、そして母子が出産まで生き延びた回数は0。

「1度は子供が産まれてくる寸前だった」


「ミケちゃんは一度も生き延びていない。

「時間の修復作用が、ここまで強大つよいとはね(ため息)」


猫又は強い視線をこちらへと向ける。

「あんたがあの娘の死で、この世界地球を滅ぼそうした回数3回。

「成功した回数0。

一度は竜神サイファを解放することに成功して、この世界を滅ぼす一歩手前まで行ったけど、

「転心したあんたは、サイファと差し違えて世界を守った」


そうか…。

おれはそんなことを繰り返していたのか…。

それに、

「気づいてたんだな」サイファのことを、猫又。


自分は少しだけ正気に戻る。


「見てたからね、何度も(笑)」

猫又はにやっと笑い、そして、表情を引き締めて、こちらを見つめる。


「今のあんたはスカスカだよ。

転生を繰り返しながら、転生する度、時間遡行をする度に力を使う記憶を無くし続けて、

サイファと差し違えたころの力は、なんにも残ってない。

「世界の源泉は、まだあなたの中に有るけど、

汲み出す井戸も柄杓ひしゃくもなけりゃ、何にもならないね」

…そうだな。


「どうすんの?

いや、何する?」


ああ…。

「サイファを解放する」


「大丈夫?喰われるよ。

続けるのかい?」


「ああ、

やめる理由がない」


みゆきは死んでいる。

助けるだけだ。


力を失うわけでもなく、少しずつ思い出を失うだけだ。

一回の転生で、全ての思い出を失ってしまったあいつに比べれば、気にする必要もない。


命だってやってもいい。あいつが死なずに生きられるなら。


「相変わらず、忘れているくせに、同じ答えを返すんだね(苦笑)

「で、どうすんの?

サイファは、」


猫又の言葉を遮りながら、

「弱らせて解放するんだ。

「封印はそのままにして、

力を七つに分け、鍵を掛けて取り出せないようにする。

鍵の名は…、」


「七振りの剣、だね(笑)」

猫又に遮り返される。


「知っているのか?」

猫又とはあのシナリオはやって居ないはずだが。


「前に、繰り返してた間に何回かやったよ(苦笑)」

猫又は自分から視線を外し、虚空の先を見つめる。



以前に見た、未来の夢。

あの時、雲間からのぞいて空に浮かんでいたのは、この地球だった。


そして、七つの力の焦点も。

そう、この星にあった。


「猫又…。

彼、サイファの力をこの世界、まず自分の世界へ馴染ませるのには時間がかかる。

「彼を連れて、この自分の世界の過去へ行ってくれないか」


「どのくらいの間?」


「実時間でおおよそ二千年」


「乗った(笑)」

猫又、いい笑顔で笑う。


「いいのか?」


「もちろん!!

「嬉しいねぇ(笑)

二千年かぁ♪

何して遊ぼう?わくわくするねぇ(笑)」


猫又、相変わらずだな(微笑)


「…やったな猫又(苦笑)」

猫又自身の楽しい気持ちをこちらに見せて、狂いかけの自分を乗せて、正気に引き戻したな?


「…うん、ありがとう猫又」


「サイファの共付きはあたし自身じゃなくても良いの?」


「ああ」構わない。


「じゃ、そうさせてもらう。

そうしたら、いつでもあんたや、稲荷ちゃん、座敷ちゃんと連絡したり、話したりできるし、

たまには帰れるから(笑)

「あいつの持ち物、剣とかでの同行は?」


知性ある剣インテリジェントソードか…。

昔考えた魔法剣マジックソード…。

黄金の牙ゴールドファングはどうだ?

片刃の逆刃剣だけど?」


「良いねぇ♪

漂泊の黄金の剣士が持つ、黄金の逆刃剣。

萌える(笑)

御剣おんけん流とか使ったりして(爆笑)」

ほんと、相変わらず(笑)



  −◆◆◆−


「猫ちゃん!!、

○○さんが、○○さんがぁ(号泣)」

あたしにすがりつき、泣きつづけている座敷ちゃん。


「大丈夫。今会ったけど、まだね、だいじょうぶだよ。

「まだ笑えるだけの気持ちが残っているうちは、まだだいじょうぶ。」座敷ちゃんを優しく包み込むように抱きしめてあげる。


「あいつ、あたしの言ったことに笑ってた」抱きついている座敷ちゃんを撫であやしながら、そうなぐさめる。


「猫又ちゃん、ありがとう。ごめんね、任せちゃって」少し苦しげな表情を見せる稲荷ちゃん。


「大丈夫?稲荷ちゃん?」


「うん…。だめね、わたし」


「しかたないよ、稲荷ちゃん。稲荷ちゃんは○○の2号さんなんだから(笑)」


「誰が2号さんよっ!!

くびり殺すわよ!!」


「その調子(笑)」元気出たかな?


「…ごめんなさい、ありがとうね」


「いいって(笑)

稲荷ちゃんは○○の側室なんだから、しかたないよ(笑)」


「…猫又ちゃん。いつまで続けるの?」


「いやぁ(苦笑)

おかわり3杯はイケるかなぁと(笑)」


「相変わらずよね(苦笑)

「ありがとうわ、もう言わないわよ」


「ああ、おっけ(笑)、

「大丈夫?座敷ちゃん、○○の部屋がツラいなら、あたしの家に来る?

あたしは出かけなきゃならないけど?」少し心配だ。


「わたしは部屋に帰ります。

「○○さん、部屋に誰も居ないと寂しがりますから(少笑)」


「…ん、そうだね。正妻は家にいなきゃマズいよね(笑)」


「正妻じゃないです!!

って、猫ちゃ〜ん(怒)」


「ははっ、冗談だよ(笑)

「何かあったら稲荷ちゃん頼りなね。

あたしは来れないけど、ネットや電話はたぶん通じるから(笑)」



「はいっ、きーちゃんに会いに行きますっ」ん。表情明るくなった。



「猫又ちゃん、何の用事?」、「猫ちゃん、どこ行くんです?」


「「いつまで?」です?」


首を傾げて(笑)、

「ん〜。○○の世界へ、

「大悪魔、シフレ氏と一緒に、二千年?」


「「はあ!?」」



あたしの冒険あそびの時間が始まる♪


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