第24話 考えるより先にやっちゃうタイプ
次の日、ディーツはタルバマ王国というイリス大陸で2番目に大きな国の王都に来ていた。ちょうど大陸の真ん中あたりに位置する湖を要する豊富な水源のある国だ。優美な都としても知られている王都の隔壁は白い雅やかな壁で構築されていた。
王都の入り口からやや離れた丘に立って門を眺めていると、隣にいたヴィヴィルマが顔を顰めた。遠くでも十分見えるほど彼の視力はいい。魔法かと思えば体質らしい。
「身分証が必要なようだ」
「どうにかして中に入れないか?」
「一応、転移ができないような魔法が施されている。中に入るのは不可能ではないが、入ったらすぐにどこかにばれるような仕組みだろう。その後はどうする」
平素から考えることの苦手なディーツだ。アムリに脳筋、考えなしの烙印を押されている。王都にヴィヴィルマの転移魔法で入ればいいと気楽に考えていただけに、いきなり問題に直面したため軽いパニック状態だ。
頭をがりがりと掻きながら、視線を小高い丘が続く平原へと向けて首を傾げた。
「あれ、襲われてないか?」
ディーツの視線の先、盛大な土煙を上げて馬が数騎王都に向かって駆けている。その後ろから丘ほどに巨大な岩のような生き物が迫っていた。丸い巨体はごろごろと転がって移動している。巻き込まれたら一瞬で潰されるだろう。
「ダモメだな。こんなところに出るとは珍しい」
「ダモメ?」
「山の近くの岩場に生息する魔物だ。平原などには滅多に現れないが、何か逆鱗にでも触れたか」
「あれ助けたら街に入れるんじゃねぇか?」
「そんなに簡単に行くとは思えないが」
「やってみる価値はあるだろ、あそこまで跳んでくれ」
ディーツの願いにヴィヴィルマが魔法陣を描く。
そのまま、すぐに景色が変わった。
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「な、え? どっから現れた?!」
「嬢ちゃん、あぶねぇぞ!」
「民間人は直ちに批難して!」
駆け抜けていく馬の上から三人の茶色の制服に身を包んで軽鎧を着こんだ男女が口々に騒ぐ。それをやり過ごして前を向くと、巨体がゴロゴロと目の前に迫っていた。
「手伝うか?」
「いんや、いらねぇ」
ヴィヴィルマが小さく頷いたのを確認して剣を構え、巨体に剣を刺してそのまま上へと跳躍する。勝手に転がるダモメは回りながら、真っ二つへと斬れた。
青い液体のようなものをまき散らして、半分になりながらも王都に向かって転がっていく。慣性の法則だ。回っているものは急には止まれない。
体中にその粘つく体液を浴びたが、気にしている暇はなかった。
「やばい、ヴィヴィルマ、片方任せた!」
「君は少し考えなしだと我は思う…」
「うるせぇ、文句は終ってからだ」
言いながら、半分になったダモメを瞬時に細切れにしていく。
もう片方はヴィヴィルマの氷の魔法で瞬時に凍って真横に倒れた。
なんとか被害は最小限に抑えられたようだ。
「お前は杖とか呪文とか必要としないんだな」
「我は魔法陣をすぐに描くことができるから必要ない」
なるほど、杖や呪文は魔法の発動の補助ということか。
だが、ほっとしたのもつかの間、ごおおっと音をたてて灼熱の塊が飛来した。一つ一つの威力は大したことはないが、数が多い。ざっとみただけでも百以上ある。
「今度はなんだぁ?!」
「攻撃されている」
「それはわかってるよ!」
説明が欲しいのはその理由だ!
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