2人のキオク
ゆん
第1話
君の髪の毛が揺れた。その吸い込まれそうな目が静かに煌めいた。そしてゆっくりと口を開いた。
「私の事……
「はるとー!起きてるー?」
下からお母さんが大きすぎる声で呼んだ。
「起きてる起きてる…」
本読んでて徹夜明けなんだからもうちょっと寝かせてくれてもいいのに…
「今日入学式でしょ!」
…
…
こんな日に遅刻とかしたらやばすぎる!俺の高校生活が…
「玄関でひかりちゃんまってるわよー!」
「今行く!」
朝ごはんもそこそこに俺は家を飛び出した。
「まったく…ハルはもうちょっと早く起きれないの?」
「ひかりが早すぎるんだよ…。まだまだ時間あるじゃねえか。なんだよ5時起きって。健康的すぎんだろ。」
「入学式前日に徹夜してた誰かさんと違って普通ですー!」
「はいはい」
なんてくだらないことを言ってたら見えてきた。
今日から通う高校が。
玄関にはもう人だかりが出来ていた。クラス発表がされているらしい。
えーっと
あった。他に知り合いは…げ。
「またひかりと一緒かよ!」
「わ、ほんとだ。ハルは私と一緒で嬉しい?」
「ワーチョウウレシイナー」
バシっと肩を叩かれた。
水沢ひかりの名前の他にも同中の名前がちらほら。
「あっ」
「どうかしたの?」
何故か見覚えがある気がして、でもわからなかった。
「いや、なんでも。」
次の瞬間、誰かにぶつかった。
「ご、ごめん!」
慌てて謝ってその子を見た。と同時に驚いた。
肩ぐらいの黒髪。少し大きな目。何よりその口元のほくろ。誰かと面影が重なる。
「ごめんなさい…!」
その子は小さく呟くと走っていってしまった。
「今の子知り合い?」
不思議そうな顔でひかりが聞いてきた。
「いや知り合いっていうか…見覚えがあるというか…。」
「へー!可愛い子だったじゃん。後で紹介してね。」
教室に行くと隣の席はあの女の子だった。
何となく気まずくなって挨拶をしようとした時、
「あ、あの!私、渡部天雪って言います。遙斗君ですよね?私の事……覚えてないですか?」
と話しかけられた。
「ごめん。見覚えはある気がするんだけど覚えてないや。どこであったか教えてくれない?」
しばらく沈黙が続いた後彼女は口を開き、
「覚えてないならよかったです。これからよろしくお願いします。」
そう言ってにこりと笑った。
その妙な言い回しが少し気になったが
「よろしくね。」
と言葉を返した。
休み時間になり、昨日読み切っていない本を読もうとしていたら、天雪も本を読んでいることに気がついた。仲良くなろうと思い、
「なに読んでるの?」
と聞いてみた。するとびくっとしたあとゆっくり振り向き、表紙を見せてくれた。
読んだことあるものだったので、
「その作品天雪も好きなの?」
「遙斗君も好きなんですか!?」
目が急に煌めき始め、2人であのシーンがよかったとかそんなことを話しているうちに休み時間は終わった。ちなみにひかりは一瞬にして女子グループのトップになっていた。なんかこっちをちらちら見てたけど。
初日だったので学校はすぐに終わり、ひかりと一緒に帰っていた。
俺は天雪とすごく趣味が合うことなどを話しているうちに、ふとひかりの機嫌が悪そうなのに気づいた。
「どうしたんだ?」
「べっつにー?本しか友達がいなかったハルがお友達出来て良かったと思ってるだけだけどー?」
「本しか友達いないわけじゃない…な…い…し」
そんなこんなで俺の高校生活一日目が終わった。
2人のキオク ゆん @hyuna
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