第六十話 注意事項
はぁ、疲れた。茜さん、やっぱり俺に対してだけ口数が多くなっていると思う。
蒼に助けてって目線を送ったけど、笑いながら合掌していたし、許さん。
俺と桜は職員室に向かう。紅蓮先生からの呼び出しだ。多分、今回の実践訓練のことだろう。もう開始まで1週間をきったからね。
俺と桜は職員室の扉をたたく。
「失礼します。」
俺たちはそのまま紅蓮先生の机へと向かう。
よくよく考えたら、紅蓮先生以外の先生の授業を受けたことがないな。どんな先生方がいるのだう?ふと、職員室を見回す。
うん、人じゃない先生も何人かいる。妖怪かな?でも、妖力が小さいような?
そんなことを考えていると先生の机まで着く。
「ああ、二人とも疲れているのにすまないな。」
「そんなことないですよ!私はずっと桃と一緒で楽しかったですから!」
「俺は蒼や茜さんにこっぴどくやられました。」
「あの二人相手に原型を留めているだけでもすごいことだぞ。」
え、二人ってそんなにヤバいの?というかその話し方だと原型を留めていない人がいたってこと!?すごい気になるんですけど!?
「今日呼んだのは実践訓練のことだ。」
やっぱりかー。でも、俺たちの班だけ
あれかな、怪我をしないようにってことかな?
「初めての現での訓練だから注意事項を話しておこう思ってな。お前たち、この前配ったプリントに目は通したか?」
班決めの時に配っていたプリントか。確か、注意事項って書いてあったけど、あれって確か
「そのプリントにも書いてある通り、術の威力、範囲は最小限にな。術を使いすぎると後々面倒なことになるからな。」
面倒なことってなんだろう?危ないよってことかな?
「まず地形が変わると地図の書き換えや書類などの提出。陰陽師自体、秘匿な存在だ。国の力で地形の変化などを誤魔化さないと行けなくなる。それにも色々と必要なことがあるからな。」
国からの偽造があっても隠し通せるレベルである必要があるってことか。それに、書類提出って絶対やだ。
「先生!もし、どうしても使わないといけない状況になったらどうしたらいいですか?」
実際に、俺や桜が陰陽師になったのも
「その場合は、結界を張る。共有陰陽術式の札の中にあっただろ?」
授業でみたことしかないけど、あれだろうな。確か、『
読んで字の如くの効力をもった札だけど、範囲が狭かったような?
「お前たちの班には明力お化けの初瀬がいただろ?初瀬に頼めば一般の陰陽師の数倍の大きさの結界が張れる。」
やっぱり、明力の量って大事なんだな。というか、初瀬さんが明力お化け?それってどういうこと?
「お前たち、初瀬の明力が体から溢れているのに気づかなかったのか?」
え、そうなの?
「そうだよ、かなた!桃ってすごいんだよ!体から常に明力が漏れ出ているのに疲れ知らずなんだよ!」
「初瀬の場合、明力の体内に貯めておける量がおかしいのもそうだが、明力の生成スピードが一般の陰陽師の数倍らしくてな。」
「何それ、ずるい。俺もなんかないですかねー。」
……あれ、二人からジト目で見られているような?
「かなた、それ本当に言ってる?」
「桜のいう通りだぞ。お前はだいぶ異常だぞ。」
え、俺って異常なの?半年内に何回か事件に巻き込まれているだけなんだけどなぁ。
「それよりもだ。お前たちの
あ、そうか。一般の人に見られたら
可能な限り、その状況を減らすために隠密行動をするってことかな。
「それにな、お前たち二人の術式は強力だが現の任務では向かない。術を使う時は結界内、緊急事態の時でも環境への影響は最小限に。」
「そうですね。私の場合、少しでも間違えると火事になりかねないですもんね。」
一般人に見られてはいけない、かつ術式発動は周りを配慮しつつか。とても戦いづらいな。
俺も気をつけないと。下手をしたら森一帯氷漬けにしちゃいそうだし。
「あ、そうだ。かなた、最近ぬらりひょんから何か言われたりしたか?」
「い、いいえ。最近静かなんですよね。」
素直に術を使ったので消耗して眠ってますなんて言えないもんね。
でも、心配だ。数日、夢の中ですら会っていない。数日は寝ると言っていたけれど、少し怖いな。
「また、ぬらりひょんが何か言ってきたら報告してくれ。」
「はい。俺もあいつの声久々に聴きたいです。」
もうそろそろ起きて欲しいな。夢の中でしかできないこともあるし。
「二人とも、さっき言ったことをしっかりと頭に入れておけよ。」
「「はい‼︎」」
訓練まで1週間をきっているし、準備を怠らないようにしよう。
でも、行き先は言われていないけど大丈夫かな?
そんなことを思いながら俺たちは家に帰った。
そして、夜——
「俺の声が聴けなくて寂しかったか?かなた。」
「戻ってくるまで時間がかかりすぎじゃ無いか?ぬら。」
数日ぶりにやっとぬらとの会話ができた。
陰陽百鬼 Moi @jinchi23
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