第四十九話 『十二輝』の開催
医療室から解放されて2日が経った。
俺—出雲かなたは今、桂馬さんに連れられて大きな扉の前にいた。
「心の準備はいいかい、かなたくん?」
「はい、いつでも大丈夫です。」
扉が徐々に開くにつれ、鼓動が早くなっていく。
俺は一歩一歩、前へ進んでいく。緊張しすぎて歩いている気がするしない。
扉をくぐればそこは暗闇。
なにここ?暗すぎて何も見えないけど…。本当にここで『十二輝』が開かれるの?
『出雲かなた、そこで止まりなさい。』
機械的な声が耳に届く。そして、後ろの扉が閉じる。
完全な暗闇。周りに何があるのかわからない。
次の瞬間、俺にスポットライトが当たり徐々に周りが明るくなる。
俺がいる場所はまるで裁判所の法廷の様だった。
左右に6個ずつ、窓のふちの様なものが取り付けられ、そこには黒色の幕があり奥が見えなくなっている。
そして中央には大きな
「ようこそ、かなたくん。十二輝へ。これから先は私語は厳禁。質問されるか、手を上げて許可されれば発言はできるから。」
御簾の奥から十六夜さんの声が聞こえる。
前に陰陽連のトップって言っていたけど本当だったんだ…。
「さて、いきなりだけど本題に移ろうか。5日前、鬼灯紅蓮、出雲かなた、中野桜以下三名よる鬼人撃退が報告された。そして、その時の最大功労者である出雲かなたに参考人として来てもらった。まず、手元にある資料に目を通してもらって質問があるものはその都度挙手してくれ。」
御簾の奥から紙が擦れる音が鳴り出す。そして徐々に音が止んでいく。
でも、御簾があるから手を挙げてもわからないんじゃ…。
「では騰蛇、質問を許可する。」
「まず、出雲かなた。お前は片足がないとはいえ、紅蓮先生が倒れているにも関わらず鬼人と渡り合ったのか?」
「はい。でも、それにはまず、ぬらりひょんに聞いてもらった方がいいと思います。」
「ぬらりひょん?」
次の瞬間、俺の横の床がスライドし、そこから水晶が現れる。
正式な通達があった後に彗馬さんに
妖怪と話すことのできる水晶—霧雨の水晶に形代をはめ込む。
『あーあー、聞こえているか?』
「大丈夫ですよ、ぬらりひょんさん。」
『よかった。これで騰蛇の陰陽師の質問に答えられる。』
久々に聞いたなぬらの声。この5日間全く夢を見なかったし、何かあったのかな?
『まず、質問に答える前にかなたが“共鳴者”であることを理解した上で聞いてくれ。』
それを聞いた瞬間、周りの空気が変わった。
『鬼人と渡り合ったのは俺だ。といってもかなたの身体を借りて殺気を飛ばしただけだがな。』
「その時、出雲かなたの意思はあったの?」
この声、二条さんかな?でも、前に話した時よりも言葉に鋭さと重みがある。
他の十二家の方々も答えを待っているかのように、周りが静まる。
『意思はない。だが、かなたの命が危なくなった時のしか使えないな。火事場の馬鹿力ってやつだ。』
その答えを聞いた瞬間、空気が強張る。
俺も驚いている。まさか、許可を出したことを隠すなるて…。なんで、そんなこと隠したんだろう?
「つまりお前は無理矢理、出雲かなたの身体の支配権を奪えるってことか?」
鋭い言葉が霧雨の水晶に投げられる。
『さっきも言った通り、命の危機がない限りは不可能だ。かなたが死んだら俺も外の世界とのつながりを閉ざすことになる。この水晶を使ったしても、今のように話したりすることはできなくなるしな。』
「お前の言いたいことは理解した。だが、信用はしていないからな。」
『ああ、それでいい。それに入れ替わることが少ない方がいい。』
これはなんとかバレずにやり過ごせたってことかな?
それにしても、ぬらってすごいな。肝が据わってる。俺なら絶対、どこかで矛盾が生まれてバレる自信がある。
「他に彼に質問がある者は?」
すると御簾の奥から微かに音が鳴る。
「
「では、ぬらりひょんさん。なぜ嘘をつくの?あなたの声からは嘘の振動がしているの。」
この声、二条さんの声だ。
振動なんかで嘘だってわかるものなのか?俺にはいつものぬらの声にしか聞こえなかったけど…。
「そうなのですか、ぬらりひょんさん?虚偽の報告は自分たちの首を絞めることになりますよ。」
『そんなことするわけがないだろう?俺やかなたの命がかかってるかもしれないからな。』
ぬらは普通に言葉を返す。
「わかったの。信じるの、その言葉。一応、鎌をかけただけだったの。」
あ、焦ったー!鎌をかけられただけか…。本当にバレたかと思ったよ…。
「では他に質問のあるものは?………、いないみたいだね。では、これで出雲かなたへの問答を終了とする。それじゃあ、かなたくんは退室を。」
そう言われると閉じていた扉が開く。俺はゆっくり振り返り、『十二輝』の会場を後にした。
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