第四十八話 正式な通達
俺—出雲かなたが鬼人と戦ってから、もう3日が経った。
3日前までまともに歩けなかったのに、2日でほぼ完治。1日様子見でいたけど、その時には十分動くことができた。
昨日には親父にも連絡したけど、学校の行事の準備で3日間泊まることになっていた。
学校側が隠してくれたんだろうな。
鬼人に襲われて治療中だなんて言えないし、本当に助かった。
そして今日、正式に通達がきた。
2日後に開かれる『
二条さんが言っていた通り、開かれるんだ。
確か陰陽連最重要機構だったかな?
そんな重要なものに呼ばれるなんて…。どのように撃退したのか、なんて聞かれたらどうしよう…。
それらしいことをいって捏造する?絶対バレるよなぁ…。
うーん、どうしよう。
「そんなに悩んでどうしたんだい?」
そこには俺の様子を見にきた彗嗎さんがいた。
「彗嗎さん。いや、二条さんが言っていた『十二輝』の強制参加の通達がきて…。」
「君は『十二輝』の内容になることをやったってことだよ。でも、下手をすれば死刑にもなりうる。そんなことは滅多にないけどね。」
「始まる前から脅さないでくださいよ…。」
「ごめんごめん。でも、しっかりと心の準備はしときなよ。君の言葉一つ一つに命がかかっていると言ってもいいぐらいだからね。」
「それって前例があるんですか?その…し、死刑の。」
「判決はされたけど、執行はされなかった人は一人だけいるよ。だいぶ昔の人だけど。だから、そう簡単には死刑にはならないから大丈夫だよ。」
それならよかった。でも、一人はいたんだ。でも、何をしたら死刑が決定されるんだろう?
「そういや、かなたくん。今日で普段通りの生活に戻れるね。桜さんも君と一緒で大事をとってこの3日間、学校で休んでもらっていたから君より先に家に帰ってもらったよ。」
だから毎日、お見舞いに来てくれてたんだ。
桜の方も頭蓋骨にヒビが入っていたみたいだけど、3時間で治ったって驚いてた。
普通なら絶対に不可能なことだ。桜も見舞いに来てくれた時に驚いたって話してた。
紅蓮先生は全身の骨にヒビが入っていたにも関わらず、1時間で完治させたって彗嗎さんは言ってたけど…。
そこまで行くと本当に人間なのか怪しくなってくるな…。
「やっと家に帰れますよ。それにしてもすごいですね、あの医療機器。動けないくらいの大怪我を2日でほぼ治すなんて。」
「あれはいろんな術式を組み込んでいるからね。その分扱いも慎重じゃないとダメなんだけどね。」
そんな話をしていると医療室の扉が開けられる。
「かなた!もう帰れるようになたって本当⁉︎」
「桜?先に帰ったんじゃ?」
「そうなんだけど、かなたのことが気になって学校内で待たせてもらってたの。そうしたら彗嗎さんから連絡があって、飛んできちゃった!」
「ありがとう、桜。それじゃあ、一緒に家に帰るか。今から服を着替えるから、桜は扉の前で待っていて。」
「わかった!」
俺は桜が出て行ったことを確認し、カーテンを閉め着替えを始める。
それにしても、なにあの子。
可愛すぎない?
わざわざ迎えに来てくれるだけでも嬉しいのに、あんな言い方は反則だよ。
「なんだか、とてつもなく甘ったるいな…。」
「彗嗎さん、何か言いました?」
「いや、なんでもないよ。」
着替えを済ませて、医療室を出る。
「ごめん、桜。待たせたか?」
「いや、全然待ってないよ。それより早く帰ろう?」
「そうだな。」
そう言って、二人で歩き出す。
やっと普段の生活に戻れる。三日間ずっとベッドの上にいたし、体も鈍っているよなぁ…。
夢の中でずっとぬらと話し合って決めたことだが、ぬらに身体を渡したことを話すことにすることになった。
とはいっても、嘘を混ぜて本当のことは隠すつもりだけど。
共鳴者は陰陽師の中でも異質な存在だってぬらは言っていた。
そして、それは孤独を生むとも…。
現代の陰陽連で共鳴者がどう考えられているかわからない以上、
う〜ん、どうなんだろう?
仁智さんの話しを聞く限り、共鳴者は排除されるようには思えないけどなぁ〜。
「かなた、どうしたの?なんだか難しい顔してるよ?」
桜が下から覗き込む。
そんな顔に出てたかな?もしかしなくても、俺って顔に出やすい?
先生にも見抜かれたし、気をつけた方がいいかな…。
「やっと家に帰れるし、今日の夕飯のことを考えてだんだよ。」
「そうだね。私もずっと家に帰れてなかったし、やっと心から落ち着けそうだよ。」
そう桜は笑っていた。
本当に3日前に死闘をしたなんて、実感が湧かないなー。
桂馬さんは、全員が生き残れたのは奇跡としか言いようがないって言っていた。
ぬらに身体を貸した時、鬼人が引いてくれていなかったら俺たちは…死んでいた。
これは紛れもない事実だ。
だが、これで俺のこれからの目標ができた気がする。あいつを超えないと桜を守れない。
誰かを守るためにも、力をつけないとな。
「ほら、かなた!また難しい顔してるよ!明日は特別に休みにしてもらったんだから、早く家に帰ろ!」
そう言って桜は俺の手を強く引っ張る。
桜はすごいな。いつでも明るくて、一気に不安をなくしてくれる…。
「そうだな。早く家に帰ってダラダラするか!」
俺と桜は一斉に駆け出した。
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