第四十七話  編入と電話と女の子

 とは言っても、先生の提案ってなんだろう?

 山にこもって修行とか?火の中を裸足で歩くとか?

 なんだか段々怖くなってきたよ…。

 「桜、そんなに怖がらなくてもいい。ただ、お前とかなたに同い年の陰陽師たちと共に学ばせようと思ってな。」

 「それって、つまり…編入って事ですか?」

 「その通りだ。お前たちには経験や技術は十分に備わっているが、他の陰陽師たちとのコミュニケーション能力が欠けている。そこを補ってもらうために編入させる。ちゃんと二人とも同じクラスになるよう手配しておくからな。」

 かなたと一緒のクラスになれるのは嬉しいな。でもそれってこの特別クラスがなくなるってことだよね?

 なら、もう紅蓮先生の授業は受けられないのかな?

 「お前ら二人にはAクラスに入ってもらうつもりだ。俺も二人が編入したら、組み手の授業に戻ることにになると思う。もともと俺は司令部と教師の二つを兼任していてな、二人が編入した後でも授業をすることになるな。」 

 先生ったエスパーなのかな?私の心を読んでくるよ…。

 でも、これで編入した後も先生の授業が受けれるんだ!

 楽しくてすぐに時間が過ぎるから嬉しいな〜。

 これでかなたも元気になってくれたら…。

 そんなことを考えているとコンコンと扉がノックされる。

 「失礼します!」

 誰だろう?声はどこかで聞いたことがあるような…。

 勢いよく扉が開かれ男の子が入ってくる。

 「紅蓮先生!大丈夫ですか⁉︎」

 確かこの人…、確か私たちが初めて鬼に襲われた時に助けてくれた…名前なんだったけ?

 「クウガ、医療室では静かにしろ。」

 「でも‼︎」

 そうだ、仲谷クウガさんだ。そういえば、クウガさんも紅蓮先生の教え子だったんだ。

 「紅蓮先生が医療室に運ばれたって聞いていてもたってもいられなくて、任務の後飛んできましたよ。」

 「それは嬉しいが、任務で疲れてるならしっかりと休まないとダメだぞ。」

 「それはそうですが…。」

 この人、紅蓮先生には強く言えないのかな?でも、この人確か陰陽連第三位の人だよね?なら紅蓮先生に対して敬語なんだろう?

 やっぱり尊敬してるいるからかな?紅蓮先生なら多くの人から尊敬されていそうだな。

 「それで、ほかにも目的はあるんだろ?」

 「やっぱり先生には見抜かれているんですね。十六夜様から今回の事を早急に資料にまとめてほしいとのことです。」

 「了解した。あの方が期限を設定しないという事は今日中だな。ならすぐに取り掛からないとな。桜、俺はいつもの場所で作業しているから、何かあったらすぐにこい。」

 先生はすぐさま医療室を出て行った。先生、大丈夫かな?私たちより頑丈っていっても化け物の攻撃をモロに受けていたら、普通は歩けないんじゃ…。

 それよりも、今この場所に私とクウガさんを置いていかないで欲しかったな…。

 な、何を話せばいいんだろう?

 とりあえず、初めて会った時助けてくれてありがとうございましたってお礼を言うべきなのかな?

 突然クウガさんは私の方に振り返り、目を鋭くしこちらを睨んできた。

 え⁉︎私何もしてないよね?なんで睨んでくるの⁉︎

 「お前に言っておく事がある。紅蓮先生の最高の教え子は俺だ!そこは忘れるなよ!紅蓮先生は俺と話している時もお前たちのことしか話さなくなったとか羨ましくなんてないからな!」

 そういって医療室を出て行った。

 今のってなんだったの?

 うーん、よくわからないな。でも、クウガさんが先生を心から尊敬しているのはわかったね。

 それよりあの戦いからどれくらい経ったんだろう?多分数時間は経ってるよね。

 さっさとお父さんに連絡しないと。かなたのお父さんにも連絡した方がいいよね。 

 そんなこと考えていると携帯が振動する。画面にはお父さんの名前が表示されている。

 こんなにタイミングがいいことある?とりあえず応答する。

 「もしもし…。」

 『桜か?そっちは元気でやってるか?学校から行事の準備で3日間泊まるって聞いて驚いたぞ。昨日は電話にも出ないし…。』

 え、どういうこと?で、でも学校ってことは、合わせた方がいいよね…。

 「そ、そうなんだよ!泊まらなくてもいけると思ってたんだけど間に合わなくって。かなたもいるからこっち楽しいよ!」

 『それならいいんだ。でも、次からはちゃんと前もって連絡してくれよ。』

 「わかった!それじゃあ切るね。」

 『帰ってくるときは連絡してくれよ。』

 そういって電話を終わる。

 な、なんとか誤魔化せたかな?

 これからもこんな風にお父さんに嘘をつかないといけないのかな…ちょっとだけ、良心が痛むな。

 それに、またあんな戦いが起こる可能性があると思うと怖くて仕方がないよ。

 今回の戦いはかなたが無理な戦いをしたからなんとか助かっただけ。そのせいでかなたがまだ目を覚ましていない。

 私はかなたを守るどころかただの足手まといだった。大口を叩いて何もできなかった。

 ただ、守られただけ……。私がもっと強かったら…。

 「強くなることは出来ます。それは君の覚悟次第です。」

 私の考えに反応するかの様に言葉が飛んでくる。

 え、誰?どこにも姿が見えないけど……。

 「それはですね、私が許可してないないからです。ちょっと待ってくださいね。うーーーーんしょ!」

 ほんっと音を立て、空中に煙が出現する。

 徐々に煙が晴れていき、そこに可愛らしい和服姿の女の子が現れた。

 

 

 

 

 

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