第四十六話 会議と拷問器具と桜の決意
誰?全く見覚えがないけど…。
こんな二足歩行で歩くクマの人形なんて忘れるわけないし…。
「やっと目覚めたようなの。そういえば、ちゃんと名乗ってなかったの。妾は陰陽連第十二位
なんで俺の名前知ってるの?
それに今、十二位って言ってた…。
つまり仲谷クウガと一緒の十二家の一人。
この人が倒れた俺たちを助けてくれた人?今は何で俺のことを知っているかは後にして…。
「…え、えっと二条さん、俺が倒れた後はどうなったんですか?俺、倒れてからの記憶が曖昧で…。」
「君が倒れた後は三人とも
聞きたいこと?ぬらが俺の身体を使ったことかな?
あれは……まだ、言えない。
俺は固唾を呑んだ。
「君が鬼人を撃退したことは間違いないの?」
「それは間違いないです。」
正確にはぬらだけど身体は俺のだし、あのことは言えないし…。
「ありがとうなの。この確認を取れただけで確信できたの。数日後、会議に強制参加になると思うの。」
「え?会議ってなんですか?」
「陰陽連最重要機構『
この人のキャラがわからない…。
って、それより今すごい重要なこと言ってた。
十二家当主の会合に強制参加ってことですよね?
俺、生きて帰れるそれ?
「開催日がわかったら連絡しにまたくるの。それまではゆっくりと身体を休めるの。それでは彗嗎くん後はよろしくなの。」
「はい、任せてください。」
二条さんはクマのリリを連れて医療室を出て行った。
「それじゃあかなたくん、今から医療用の機械の中に入ってもらうよ。移動はキーレがやってくれるからそこでじっとしててね。」
『それでは移動を開始します。』
次の瞬間、俺が寝ていたベッドがカシュッと音を立てて、横に徐々に動き始める。
俺、初めてベルトコンベアーに運ばれる物の気持ちがわかった気がする。
それにしても機械って何だろう?レントゲンを撮る機械みたいなのかな?
視線を移動方向に向けると想像を超えるものが見えて来る。
どう見ても椅子だよね。それもたくさん針がついてる拷問で使われるやつ。
もしかしなくても、あれに座るの⁉︎
いやいや、流石にないよね。彗馬さんは機械って言ってたし、これは機械っていうより拷問器具だし。
「それじゃあ、かなたくんそこに座って。」
「彗嗎さん冗談はやめてくださいよ。こんなのに座ったら、俺の身体中穴だらけになりますよ。」
「冗談な訳ないよ。まあ、見た目はあれだけどちゃんとした医療機器だから。キーレ、よろしく。」
『了解です。』
ガシャッという音と共に天井から複数のクレーンが出てくる。
そのままクレーンに運ばれる。
「け、彗嗎さん、待ってください。まだ心の準備が、いや、本当に待ってください、お願いしますから!」
「キーレ、やれ。」
『了解です。』
「いやぁぉぁぁぁぁーーー!」
——かなたが目覚める前日
私—中野桜はベッドの上で目を覚ます。
ここは?私、確か鬼人に殴られて…。
「やっと目が覚めたか。」
カーテン越しに話かけられる。この声…
「紅蓮先生ですよね?大丈夫なんですか⁉︎」
「ああ、お前たちよりも身体は頑丈だからな。気絶はしたがダメージも最小限に抑えたしな。」
よかった…。鬼人に吹っ飛ばされた時は本当に驚いたよ…。
「本当によかったです!それにしても先生、かなたはどうなったんですか?」
先生の次に私が気を失っちゃったから、その後のことは全くわからないよ。
でも、私たちが生きているって事は時間稼ぎは出来たって事だよね?
「かなたは……。」
「大丈夫なんですよね?」
「………。」
先生の返しの歯切れが悪くなる。
悪い予感が頭をよぎる。
……え、嘘だよね?そんな訳ないよね?
「先生!かなたは、かなたはどうなったんですか⁉︎」
私は痛みを忘れて立ち上がり、カーテンを開ける。
「桜、無茶をするな。とりあえず座れ、かなたは眠ってはいるが命に別状は無い。」
つまり死んでいないってことだよね?よかった、本当によかったよ…。
それじゃあ何でこの場にいないんだろう?
私も先生も片側が壁だから、横にはもうベッドはないはず…。
「先生、かなたはあの後どうなったんですか?」
私はベッドに戻りつつ質問した。多分、時間稼ぎが成功して元気なんだろうなぁ〜。
「かなたは、俺たちよりも傷が深く今は彗の医療室にいる。命に別状は無いがかなり無茶な戦い方をした筈だ。」
「それって、死んだりしないですよね⁉︎かなたはちゃんと元気になるんですよね⁉︎」
かなたは私たちが気絶した後に、一人であの鬼人と戦ったってことだよね?
あんな、首を掴まれて持ち上げられた状態から。
そんなの本当に無茶をしなきゃできない。
「死んだりなんて絶対にさせない。だから、信頼できる彗のところに任せた。それにかなたの身体の修復自体はもう終わってバイタルも安定している。」
「でも、それじゃあ何で身体が治ったのに目覚め無いんですか?」
「これはあくまで彗の推論なんだが、無茶の代償らしい。鬼人による傷以外に、内側から破壊された様な傷があった。その傷は強力な術式を使った結果こうなった可能性が大きい。」
かなたは自分の身体を削って戦ったってことだよね?
でも、その術式を使わなかったらみんな死んでいた。
かなたは私と先生のために、自分のことを顧みないで戦った。
私が何もしないで気を失ったから。
私がもっと強かったら、私がもっと戦えたら…。
私が…私がッッ!
なにもできなくて、悔しくて悔しくて!
かなたのことを考えるだけで涙が止まらない。
これ以上、かなたに守られるだけなんて……嫌だ。
「桜…お前の考えている事はわかる。お前もかなたもすぐに顔に出るからな。だから、お前にひとつ提案がある。かなたにも言うつもりだったんだが……。」
「お願いします。私が強くなれる可能性があるのなら、なんだって食らいついてみせます。私は…かなたに守られるだけなんてもう嫌です。かなたと肩を並べて戦いたいんです!」
かなたと平等に渡り合えるになってかなたを守れるようになる、絶対に!
それが陰陽師になるって決めた私にやれる事だから!
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