第四十四話 鬼人との戦闘

 白銀の世界が鬼人のところまで広がる。

 鬼人の足から徐々に凍り始める。

 「ああもうめんどくせぇな、この氷は!」

 鬼人は無理矢理足を地面から離し、俺から距離を取った。

 血に似た何かが思いっきり滴ってたよ…。それでも地面に着く頃にはもう治ってるし、自己治癒力高すぎ!

 だけど、なんで地面を抉らなかった?何か理由があるはず…。

 もっと条件を絞っていこう。でもこの後どうすればいいの?

 『かなた!くるぞ!』

 ッッ⁉︎

 「おーらよ!」

 鬼人の拳が俺の顔めがけて飛んでくる。

 くそ、なんで『氷結領域アイスワールド』が効いてないの⁉︎

 領域に入ったら自動的に攻撃するはずなのに!

 ……こいつ、地面に足をつけずに攻撃してきたのか!

 領域に足をつけなきゃ、入ったと認識されない。こんなすぐにバレるなんて!

 「オラオラオラオラ!」

 連続する鬼人の攻撃。一撃一撃が重いのにこんなに続けられると腕がもたない。

 ていうか、こいつなんで滞空時間長いのさ!

 でもそんなこと考えてる場合じゃない!どうする?どうする?

 ボオォォォォォ‼︎

 この音は!

 俺の領域を溶かしながら、焔の矢が鬼人めがけて飛来する。

 「甘いなぁ!」

 鬼人はすぐさま空中で体制を変え、俺に向かって蹴りを喰らわし矢を避けた。

 しっかり、領域外まで飛び退いて。

 痛っった!こいつどんな体幹してるんだよ!

 でもまた術式を使わなかった。空中では使えない?それとも使わなかっただけ?

 もっと条件を絞っていくしかない!

 「あぁぁもうぉぉうっぜぇぇ!全部喰らってやるよ!」

 鬼人は手で印を結び始める。

 くそ、頭痛が酷くなり始めた…。 

 これ、不味い。多分、俺の周りに暗気が満ち始めた。それに鬼人のセリフから考えるに『氷結領域アイスワールド』全てを抉り取るはず。

 効果はあるかわからないけど、氷壁を作って鬼人の視線から外れて一気に領域内から出る!

 領域に明力を流し氷壁を作り出す。

 次の瞬間、頭痛が一気に楽になる。どういうこと?氷があいつの弱点?

 でも、それなら領域を全て喰らうなんてことするか?

 ならもっとちゃんとした弱点があるはず…。

 今、この状況で俺が考えられることは二つ。

 一つは氷壁による抉る体積の変化によるもの。もう一つは鬼人の視線上にいないことくらいかな。

 どちらにしても試すことは出来る。

 パキッ!バキバキ!

 なんだこの音、氷壁の方から聞こえてくる。これ、もしかしなくても…。

 次の瞬間、氷壁が円状に消え去る。

 「俺から隠れるなんていい度胸してるなぁ、おい!隠れると術式使えないじゃねーか!」

 こいつ、馬鹿なのか?それも強者の余裕か?

 でも今のセリフで、鬼人の術式の発動にはが条件になっていることがわかった。

 『いけるぞ、かなた!氷壁以外でもあいつの視界は悪く出来る!』

 「うん。それに時間稼ぎはあと少し。俺にはまだ、が残っているしいける!」

 「なにごちゃごちゃ言ってやがる!お前はさっさと俺に喰われろ!」

 頭痛が酷くなり始めた。術式がくる!

 すぐさま氷壁を出して視界を奪う。

 「それはさっき見たよ!」

 鬼人は素早く蹴りをいれ氷壁を砕く。

 だけど、俺が氷壁を作ったのは視界を奪うためだけじゃない!

 「なんだ、これは!」

 鬼人の視線には濃霧があって俺を認識できていないはずだ。

 俺は領域内に氷霧を出した。俺には領域内にいる限り鬼人の居場所はわかる。

 それに氷霧には少ないけど明力がこもっている。

 鬼人がもし明力を頼りに俺を探そうとしても簡単には見つからないはず…。

 今のうちに桜に連絡をしての準備をしてもらおう。

 「夜桜、桜に準備を始めてくれってメッセージを飛ばしてくれ。」

 『了解しました。』

 あとは合図をどう出すかだな。

 それにしても鬼人が動く気配がない。どういうことだ?

 「かなた、あいつの動きは俺の糸で固定しておいた。今のうちに桜の元まで下がれ。あとは俺がやる。」

 この声は…。

 「先生!腕、大丈夫なんですか⁉︎」

 「ああ。これでも、腕を落とされるのは数回経験してるからな。」

 え、なにそれこわい。

 でも、何度も落とされてもちゃんと繋がてるから今回も大丈夫なはず。

 「それにかなたは『茅の輪』を潜る前に話していた事を試したいんだろ?」

 「は、はい。何でわかったんですか?」

 「桜に準備させるってことはそれだけ高火力の火が必要だってことだよな?それにこの氷霧があるからな。」

 それだけでわかるんですね、先生は。

 『かなた!準備オッケーだよ!』

 「わかった。すぐに離れる。」

 よし、全て条件は整った!

 「先生。」

 「わかってる。すぐに離れるぞ。」

 明力操作を行い一気にその場を離れる。

 俺たちの頭上を爆音を鳴らしならが凄い熱気が通り過ぎていく。

 俺が考えたことは一つ。

 熱による氷の気体化。つまり、急に氷の体積が約1700倍に膨れ上がって起こる地形を変える巨大爆発。

 『水蒸気爆発』だ。 

 白銀の世界に紅き矢が降り注いだ瞬間—

 爆発と共に発生した爆風が俺と先生に襲った。

 

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