第三十九話 龍翔と小村丸

 今日は金曜日。今日が終われば休みだ。

 昨日とは違う任務で今日も午前中から鬼界に向かう。

 俺—出雲かなたはいつも通り、首から形代をかけ学校の準備をする。

 いつも思うけど、夢であんなに投げ飛ばされているのに身体に疲れがないのはなんでだろう?

 現実で身体を動かしているわけじゃないからかな?

 ちゃんとこっちでも使えるようになってるといいんだけど…。

 よし!着替えも終わったし、下に降りるか。


 いつものように桜と学校へ向かう。

 「かなた、昨日はゆっくり眠れた?昨日は凄かったから。」

 「ゆっくり眠れたよ。桜の炎があそこまで威力があるとは思ってなかったよ。」

 正直、俺があれで火傷を負うところだった…。

 髪はアフロになったし。

 「だ、だってかなたが高火力って言ったから…。」

 「いや、俺が甘く見てただけだから。今日も任務だし、気を引き締めて頑張らないとな。」

 「う、うん!そうだね!」

 そんなことを話していると目の前に校門が見えた。

 

 「—って感じでやるのってどう思いますか?」

 俺は狩衣に着替え、『茅の輪』に向かっている間に先生に固有陰陽術式についての質問をしていた。

 「それは可能だと思うぞ。桜の火力があれば不可能じゃない。それに昨日の時もそれのせいで爆発力が上がっていたからな。」

 だから、背中に勢いがきたのか。普通の炎の火力だけであんな爆風起こるはずないよな。

 なら、鬼界に行く前に桜に伝えとこう。

 もしかしたら色々応用が効きそうだしね。

 「これから『茅の輪』の陰陽師に話をつけてくるから、二人とも準備を終わらせておいてくれ。だが、固有陰陽術式は禁止な。」

 「はい!」

 「わかりました。」

  準備をしながらでも桜に伝えとこう。鬼界でいろいろ応用できそうだし。

 

 『茅の輪』をくぐり、俺たちは鬼界へとやってきた。

 「今日の任務は鬼の討伐だ。お前たちの固有陰陽術式の強さは二級の威力はある。だが、経験が圧倒的に足りていない。」

 「つまり、今日は少しでも経験を積もうってことですよね?でも、昨日みたいなでかい鬼と戦いたくないですよ。」

 昨日は本当に怖かった。なんとか勝てたけど、危なかったしな。

 「今回は初級が相手するような鬼を祓ってもらう。今回は固有陰陽術式は禁止だ。明力弾と共有陰陽術式だけで行ってもらうからな。」

 「なんで固有陰陽術式は使っちゃダメなんですか?」

 「それはな、さっきも言ったと思うが、お前たちの固有陰陽術式の威力が強すぎて、今回の鬼に対してはオーバーキルなんだ。」

 俺たちの固有陰陽術式ってそんなに完成してないんだけど…。

 とりあえず、伸び代があるってことで喜んどくべきかな。

 「だから準備中に禁止って言っていたんですね。今回はこの前みたいに片手剣でいいんですか?」

 「いや、今回は少し違う陰陽具を使ってもらう。桜にはこれだ。」

 そういって桜に渡されたのは、四角い箱?らしきもの。

 「これ、どうすればいいんですか?」

 ただの箱だよな?これって本当に陰陽具なの?

 「箱の上に丸い凹みみたいのがあるだろ?そこから明力を流して見てくれ。」

 「こうですか?」

 言われた通り、桜は明力を流す。

 すると、カシュッ‼︎と音が鳴り段々と形が変わっていく。

 これは弓?

 「これは陰陽具『龍翔りゅうしょう』。弦を引っ張ることで体外の明力を矢の形に変えて打ち出すものだ。明力弾が出来るやつなら誰でも使えるものだ。」

 初めて木剣以外の陰陽具を見たな。木剣とは違って弓自体に札を使うわけじゃないんだな。

 「桜の固有陰陽術式の矢は威力と速さ共に申し分ない。だが、桜の弓の命中率が低い。そこを補うために今回はそれを使ってもらう。」

 言われてみれば、昨日の桜は数で押してたイメージだったな。

 流石は紅蓮先生。昨日見ただけで桜の弱いところをみつけるなんて。

 「かなたはこれだ。」

 そう言われて渡されたのは鞘に納めされた刀だった。

 「昨日の戦いで扱えてはいたが、あれはお前の『共鳴者』の力があってこそだっただろう?

少しぐらいは基礎ができていた方がいい。ある程度の動きなら昨日の戦いで体が少しは覚えているはずと思う。多分、きっと。」

 「そこは自信を持ってくださいよ。でも、わかりました。刀の握り方ぐらいは覚えていますから。」

 刀を鞘から抜いてみる。おぉ?なんか刀から少しだけ明力を感じる。

 「それは陰陽具『小村丸こむらまる』。木刀自体に明力を封じまたものだ。」

 「なんか人の名前みたいですね。」

 「それはそうだろ。それの開発者は小村さんだしな。」

 おう…、小村さん…。陰陽具に自分の名前を入れるってなんていうかすごいな。

 「それに自分の明力を流してみろ。」

 こ、こうかな?

 勢いよく刀に流し込む。

 「うお⁉︎」

 瞬間的に腕に負荷がかかる。

 いきなり重くなったぞこの刀⁉︎

 驚ろいたせいで、明力を流すのを止める。すると、さっきの重みが嘘のようになくなる。

 「それには明力を重みに変える機能が付いている。戦いではそれをうまく使え。」

 「まずは説明してくださいよ。強く流し過ぎて、手首がげるかと思いましたよ。」

 だけど、元が木刀のだけあって明力を流さなければ軽い。

 これ本物みたいに細いけど折れない?

 「これより任務地へ向かう。今回は俺は手出ししない。自分で考え、行動すること。だが危険と判断し次第、俺は動く。そうならないよう努力しろ。それでは任務開始!」

 「「了解!」」

 刀をトレースなしで使えるようになってみせる。

 昨日のトレースでいつも使わない筋肉を使ったせいで軽い筋肉痛になっちゃったし、ならないように筋肉を動かさなければ…。

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