第三十話 再びの鬼界
俺—出雲かなたと紅蓮先生は赤黒い空間にいる。
そこは鬼が存在する世界—鬼界
俺と紅蓮先生は鬼界に入りかけた桜の身代わりになった。
それにしても、俺は無計画に飛び込んでしまったな…。
鬼界に来るのは2回目だが、やはり慣れないなあ…。
明力操作で抑制出来るとはいえ、この身体の内側から蝕む痛みは苦手だ。
それにしても、さっきの男性?はどこかに行ってしまった。
どう考えても、鬼界に人を誘き寄せるための人だった。
しかし、探してる暇はないな。
だって俺たちに向かって巨大なカマキリが走ってきているし。
先生は大きなため息をはく。それは本当に大きなため息だった。
「かなた、ここを出てから説教だぞ。俺は桜が呼んでくる助けが来るまであいつを止めるから、かなたはどこかに隠れてろ。」
そういうと先生は前見せてくれた固有陰陽術式を発動する。
先生は糸を周りに広げる。まるで、糸の結界みたいだ。
巨大なカマキリはその糸を切ろうと前についた対になった鎌を振り下ろす。
しかし、切るどころかカマキリの鎌の方が切れる。
『ぎゅうぅぅぅうわぁぁぁん⁉︎』
巨大なカマキリは大声で絶叫する。
すごい。こんな鋭い大鎌を切り落とすなんて…。
先生はその隙を見逃さず、すぐに巨大なカマキリの体を糸で固定する。
す、すごい!あんな大鎌で切れないなんて…。
それに先生の戦いの流れに隙がないな。
これ、助けが来るまで待つ必要なくないか。このままだと先生ひとりで祓いきる気がする。
「とりあえず、このまま時間を稼がせてもらう。かなたはそのまま隠れていろ。他の鬼が出てくるかもしれないからな。」
先生は少し警戒し周りを見ている。なにか、気にしているみたいだった。
まだ何かいるのかな?
この糸の結界をすり抜けるなんてことそうそう出来るとは思えないけど。
だが、先生の警戒は段々と上がっていることはわかる。
「かなた、絶対にそこから動くな。」
さっきまでの空気とは全く違う、張り詰めた空気に変わる。
俺にもわかる。何かいる。ちゃんとわかるわけじゃないけど、いることだけはわかる。
すぐにそれが何ものかがわかる。
「ぐはぁ⁉︎」
先生の小さな悲鳴が聞こえる。
先生は少し吹っ飛ばされ、すぐに受け身を取り立ち上がる。
今一瞬だけ見えた。あれは小さなカマキリだった。
そのあとすぐに先生にまた衝撃がいったみたいだった。
これ、やばいかもしれない。さっきまで余裕を持って警戒していたのに、今は全然余裕がない。
先生も顔に焦りが出てきている。服も所々切り裂かれ肌から血が滴っていた。
俺は何もできないのかッ!
先生は俺に攻撃が向かないように注意を払いながら戦っているのに!
『プルルルルルルル…』
わっ!びっくりした!
こんな時になんだよいきなり…、携帯が鳴ったのか?
俺は振動したポッケでから電子生徒手帳を手に取る。
そこには非通知から電話がかかってきていた。
鬼界で電話がかかってくるなんて…。もしかしたら、理事長からかも。
俺は意を決して電話に出る。
初めはザーザーとノイズ音がただ聞こえるだけだった。
数秒後、ノイズ音が急になくなる。
そして、そこからは聴き慣れた声が聞こえた。
『困っているみたいじゃねーか、かなた。』
「ぬ、ぬら⁉︎」
え、嘘だろ!夢の中以外でぬらの声を聞けるなんて!
で、でもなにをしにかけてきたんだ?
『少しくらい力を貸してやるよ。例えば、鬼の攻撃に耐えれるくらい身体が丈夫になったりとかな。』
つまり、そういうことかな?
俺は今は守られる側だけど、一人で戦えるって先生に認めてもらえれば、先生も俺を気にせずに戦えるはず。
「ぬら、俺に力を分けてくれ!」
『ああ、任せろ。電話が切れたらすぐに俺の
そして、ツーツーと電話が切れる。
とりあえず、形代に触れてみる。なにも変わらない気がするな。
次の瞬間、俺の身体に電気が走る。
うわ!びっくりした!身体が一瞬痺れた。でも、これでいいのかな?
ちょっと不安だなあ…。ちょっと試してみようかな。
俺はすぐに明力操作を行い、地面を力一杯殴ってみる。
地面にヒビが入るが、俺の拳は無傷。
これならいける!すぐに先生を助けに行かないと!
でもこれ、カマキリの鎌で腕切れたりしないかな…。
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