第十七話 明力操作

 俺—出雲かなたは運動しやすい格好になって親父を起こさないように家を出る。

 道の上で準備運動を始める。

 それにしても、早朝は人が全然いないな。

 こんな早く起きたのなんて、いつぶりだろうな。ぬらと話せなかった時は早くても6時ぐらいだったからな。

 それに初めての街の探索だ。ちょっとだけドキドキするな。

 そんなふうに考えていると後ろから不意に声をかけられる。

 「こんな時間に会うなんて、かなたも明力操作を試したくなったの?」

 そこにいたのは運動しやすい服を着た桜がいた。

 「お前こそどうしたんだよ?まぁ、大体俺と同じなんだろうけど。二人で一緒に走るか?」

 桜も明力操作をしてみたかったんだろう。

俺もやってみたいしな。

 「うん!一緒に走りながら街を探検しようよ!」

 そして俺たちは、一緒に走り出した。

 

 俺たちは走り出してから2時間近くで家に帰ってきた。

 桜とは街の探索をしながら夢の中で行った明力操作について話をした。

 俺はぬらに教えてもらったが、桜はなんと理事長に教えてもらったらしい。

 それにしても、明力操作は本当に凄かった。現実の世界でやってみたが、ぬらが言っていた2割増を遥かに超えていた。

 多分、最高速度は時速60kmは出ていた。それも二人ともジョギング程度の感覚だったのだから驚きだ。

 そのおかげで俺たちは隣街まで見て来れたわけだが…。

 京都の街は前の住んでいた街とは一風変わって新鮮だった。

 ほんとに京都に引っ越したのだと実感したよ。

 しかし、この街に来てから化け物—もとい妖怪などは見ていないな。

 前の街はそこら中にいたのに、この街は一体もいなかったな。そこら辺のこともいつか理事長に聞いてみるか。


 俺が家に帰った時には親父は朝食を作っていた。

 俺はそのままキッチンに向かい、椅子に座った。

 「おはようかなた。珍しいな、こんな時間にお前が起きているなんて。しかも服も着替えて。」

 「ちょっと早く目覚めちゃてさ、たまには朝のジョギングもいいかなって思って。」

 「なるほどな。京都に着いてから二日も経ってないからな、落ち着かなかったんだろ。」

それもあるのかな?まぁ、ほとんどは明力操作がしたくて起きたと思うけどね。

 とりあえず、朝食を食べて学校に向かうか。

 

 時計が8時30分を指したころ、俺と桜は家を出た。家から高校まで約20分くらいかかる。

 10分前には着いておこうとジョギング中に桜と決めた。

 明力操作を使って急げば2分ぐらいで着くけど、登校くらいは歩いていきたいよね。

 桜もその意見に賛成してくれた。

 歩いて20分、晴明高校がみえてきた。大きな校門潜りる。綺麗な校舎や花が咲き乱れる庭が見えてくる。

 初めて来た時には気にならなかったが、よく見ると府立の高校とは思えない大きさだな。

 庭にはこの時期に咲かない花も咲いている。花壇に植えているとはいえどうやって育てているんだろう?

 俺たちは庭を通りつつ、来賓者らいひんしゃ用の玄関に向かった。

 

 俺たちは理事長室に着き、今日の予定を説明してもらった。

 「端的にまとめると、君たちには今日から陰陽師の基礎を学んでもらうよ。まぁ、今日は午前中だけだけど。」

 そういうと理事長は机の上の電話を取り誰かに連絡し始めた。

 それから数分、扉がノックされる。

 「失礼します、鬼灯 紅蓮です。入室してもよろしいでしょうか?」

 「いいよ。気にせず入ってきて。」

 扉から入ってきたのは180cmは優に超えるガタイのいい男性が入ってきた。

 何この人、デカすぎる。俺でも170cmは余裕にあるのに、それでも大きく感じる。

 「この人は今日から君たち二人の専属の先生になってもらう鬼灯ほおずき紅蓮ぐれんくんだよ。」

 この人が俺たちの先生?それに専属って…。

 「紹介された通り、君たちの専属になる鬼灯紅蓮だ。君たちが陰陽師として戦えるようになるまで俺がしっかりと教えてやる。これからよろしく。」

 「「よろしくお願いします‼︎」」

 俺たちは勢いよく返事をした。

 これからは、桜と一緒に陰陽師としてしっかりと頑張っていくぞ!

  

 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る