第九話 京都への準備㊁

 上包みを開けると、そこには四角形の紙があり、そこにはまた五芒星セーマンが書かれていた。

 しかし、箱の底にあった五芒星セーマンとは違った。

 魔法陣の真ん中に書かれており、魔法陣には読めない文字が多く書かれていた。

その五芒星セーマンを触った。

 次の瞬間、目の前を光が襲った。

 

 俺が目を覚ますと空の上にいた。そこは、上空なのに地面があり、歩くこともできる不思議な場所だった。

 「やあ、こんにちは。今回のぬらの宿主殿」

 不意に声をかけられ後ろに振り替える。そこには、立烏帽子たてえぼしをかぶり、白い狩衣かりぎぬを着た少女が立っていた。


 「さて、まずは自己紹介からじゃな!うちの名前は安倍晴明あべのせいめい、平安京の最強の陰陽師じゃ!」

 その安倍晴明と名乗った女の子は『どうだ!』といいたげに胸を張っていた。

 どう見ても小学校の低学年くらいの女の子だよな。

 こんな可愛い子が安倍晴明だなんて信じられない。

 「自己紹介が終わったところで、本題に入ろう。まず言っとくがこれは記録でしかないから、お主と会話ができない。それと場面が変わっても驚くでないぞ。それでは始めぞ。」

 そう言うと何もない上空から大きな街の上空に移動した。


 そこは歴史の教科書で見たことのある鎌倉だった。

 「これが平安京。うちのような陰陽師たちが住んでた場所。そして、夜には妖怪どもが徘徊するみやこじゃ。それじゃ場面を変えるぞ。」

 そう言うと上空からある屋敷に移動した。

 そこには晴明とぬらが座っていた。

 「これは、うちら陰陽師とぬらがまとめていた組•百夜組ももよぐみとの平和条約を結ぶ場面じゃ。これで、妖怪と人間が共に助け合いながら過ごせるとうちとぬらは思っていた。しかしこれが、この後起こる災害の引き金になったのじゃ。」

 そしてまた場面が変わった。


 次の場面になり、周りを見た瞬間、吐き気がした。その場面は一言で言えば地獄っだた。

 周りが炎に包まれ、妖怪たちが人間を殺しているからだ。

 地面には血や無残な人間だったもの、全方位から聞こえる悲鳴や叫び声。まさに阿鼻叫喚だった。

 「これは、うちらが平和条約を結んでから半年後のことじゃ。百夜組の中で平和条約に反対する妖怪どもが百夜組を抜けて組み始め、一気に攻めてきた。陰陽師たちが素早く対応したことで追い返すことが出来た。じゃが、被害者は平安京の四分の一の人口にまでのぼった。そして、うち以外の陰陽師たちはその責任をぬらに押し付けようとした。」

 一夜に大量の死者が出たのだ。

 これを起こした妖怪が元百夜組の妖怪なら、その妖怪たちの元総大将であるぬらに責任がいってもおかしくない。

 でも、俺は頭の中ではわかっていてもぬらのことが可哀想で仕方がなかった。

 「うちはぬらの気持ちはわかっていたから、平安京を襲った妖怪達を祓わずに済む方法を考えた。それが封印することだったのじゃ。」

晴明はぬらの妖怪側も人間側もこれ以上犠牲を出したくなかった。

 しかし、その行動が裏目に出てしまった。

「そして、封印が全て終わる頃にはぬらは病に伏せておった。原因は仲間を…いや、家族を封印したことへのストレスだった。……これが、ぬらの宿主になった者が知っておくべき真実じゃ。」

 俺は唖然とするしかなかった。

 百夜組を守る為に行ったことが悲しみの連鎖を起こしてしまった。

 ぬらは自分からこのことを話したくなかったのだろう。

 「もっと知りたいんじゃったら、ぬらに聞いてくれ。これでうちの説明は終わりじゃ。お主がぬらの宿主になった時点で陰陽師の『共鳴者きょうめいしゃ』となる運命はほぼ確定してしまった。本当に申し訳ない。だが、どうかその役目を全うしてほしい。」

 そう言うと空間が周りが光に包まれる。

 次に目を覚ますとベッドの上にいた。そして頬に涙が流れていた。

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