第四話 時の流れ


 いつものように桜、康介と別れて家に帰る。昼休みに桜に俺の夢の話を説明した。

 あの男が言っていた、化け物に襲われればそいつらが見えるようになること。

 また、陰陽師が勧誘しに来るかもしれないこと。

 俺も詳しい事はわからない。でも、理解できないものだということだけはわかる。

 「夕方になると数がふえるんだな。昼は全然見なかったのに。」

やっぱり暗くなると数が増えるのか?

とりあえず怖いから早く家に帰ろう。

 

 「かなた喜べ!お父さん出世したぞ!なんと、あの大手企業のBlack Whiteからオファーが来たんだよ。」

 「………まじで!?」

  いきなり言われて反応出来なかったが、父親が言っていることを理解する。

 


Black White

 日本の京都に本部を置く企業。日本や外国のいたるところに支部がある大手企業である。


 「それにお父さんが勤めるのは、京都にある本部だ!引っ越ししなくちゃいけないが、Black Whiteが引っ越し代も出してくれるみたいだから安心だ!」

 「…ちょ、ちょっと待って。いきなり引っ越しとか訳わかんない。」

 驚いていたが、父親の話を聞いて正気に戻った。

 いきなり引っ越しとか、おかしいだろ!

 生まれてから16年間過ごしてきた場所なのだ。桜や康介、学校のみんなと別れるのは嫌だ!

 桜と康介は、小学校からの友達だ。高校も俺の学力に合わせてくれた親友なんだ。

 「引っ越しっていったてすぐってわけじゃないだろ?」

 せめて、高校卒業するまでは一緒いいたい。

 「それが、明日を含めて5日しかないから明日には荷造りを始めるぞ。明々後日しあさってにはお前の学校に行くつもりだ。」

 父親の声は真剣だった。


 父親との会話を終わると自室に戻りスマートフォンをとりだした。桜と康介に連絡を取るためだ。

 まず康介に電話をかけた。

 『どうした?お前から電話してくるなんて。』

 「康介、今から言うこと信じてくれ。まず、俺の父親が京都に転勤する。そして、俺もついていくかなくちゃならない。だから、明日から荷造りを始めるから学校には行けない。」

 話した声はいつもより低い。

 こんなことで夜に電話なんてしたくなかった。

 『だからお前から電話してきたわけか。』 

 「驚かないのか?」

 康介の声は少し驚いた様子だった。しかし、すぐにいつもの口調になった。

 『驚いたさ。でも、京都に行ったって俺らは友達だろう?』

 その言葉を聞いて泣きそうになった。

 本当にお前はいいやつだな!ここまで友達思いの親友がいて本当に嬉しいよ。

 「ありがとう」

 素直に気持ちを伝える。

 『なに水臭いこと言ってんだよ。まぁでも、引っ越す前に遊びに行こうな。じゃ、いけそうな時に連絡くれな』

 そう言うと康介は電話を切った。


 桜に電話をかけようとすると、桜の方から電話がかかってきた。

 電話に出ると桜が悲しんでいるのが声からわかった。『あのねかなた、私引っ越すことになった。』

 「……マジ?俺も引っ越しするから、今から桜に連絡しようと思ってたんだが。」

 『え⁉︎かなたも?』

 驚いた。まさか、二人ともほぼ同時期に引っ越すなんておかしだろ。

 「それで、引っ越し先はどこだよ?」

  少し、いや、とても嫌な予感がした。

 最近二人だけ化け物に襲われて、見えるようにになっている。

 桜と俺に関係することが起こりすぎじゃないか?この嫌なな予感は予感のままであって欲しい。

 『確か、京都だった気がするけど。』

 「…嘘だろ。俺の引っ越し先と一緒ってどんな確率だよ。しかも同じ時期。」 

 ああ、的中しちゃったよ。

 同じ時期、場所に引っ越すなんて、裏で誰が糸を引いているんじゃないかって疑いたくなる。


 「とりあえず、引っ越すことの報告はしたから。俺、明日から荷造りはじめないと。また、時間ができたら連絡する。桜は明日学校にいくのか?」

 『私も荷造りするから、明日は休む。でも、康介にも連絡しないと。せめてあと一回ぐらいは、3人で遊びに行かないとね。』

 その意見には賛成だ。急に決まったことだけど、康介はわかってくれた。

 桜のことも、しっかりわかってくれるだろう。

 「なら、明日は確か午前中しか授業なかっだろうから、午後からなら康介も学校終わってるだろう。だから明日の午後、みんなで遊びに行かないか?」

 引っ越しまで5日間しかない。でも、明日以外は学校の手続きやら引っ越しやらで時間が取れなかなっていく。

 『私はいいけど、康介に聞いてみるね。引っ越しの報告も兼ねて。』

 「じゃあ、任せるな。なんかあったら連絡くれよ。」

 『わかった。じゃあ切るね。』

 「ああ、わかった」

 そう言ってかなたは電話を切った。

 康介は明日行けるだろうか?もし無理ならもう遊ぶ時間は取れないだろう。

 とてつもなく不安だ…。


  明日、早めに終わらすために荷造りを始めて1時間後。ひと段落ついたので、風呂に入り寝る準備をととのえる。

 「とりあえず今日は寝るか。」

 部屋の電気を消し、視界を閉ざした。

 そしてすぐに寝息を立て始めた。


 またあの夢だ。

 桜の木、そしてぬらりひょんと名乗る男性。変わっている点を挙げるとすれば、いつもよりも男性がしっかり見えていた。

 「ことが動きだしたみたいだな。今は時の流れに従ってろ。従がっていれば、お前の知りたいことが知れる。ま、頑張れよ」

 ことが動き出したってどういうことだよ!また一方的に話したかけられるだけかよ!

 「大丈夫。あと少しで会話もできるようになるさ。」

 そう言われると目が覚め、自分のベットにいた。

 

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