第三話 かなたの暴走
なんだったんだ、あの夢は?陰陽師になって欲しいって、アニメの見過ぎで変な夢になったのかな?
とりあえず、学校の準備をするか。
俺はベッドから立ち上がり、そのまま身体を伸ばす。
ん?手の中に何かある。
いつもは木箱の中にしまうはずの形代がそこにはあった。
昨日、帰ってきて木箱に直したはず…。
少しは気になりつつも、学校の準備を進めた。
俺は少し焦っていた。
いつもの通学路のはずなのに、半透明の人や尻尾が二つある猫など、前まで見えなかったはずの物がそこら中にいた。
なんだよあれ!昨日まであんなのいなかったぞ!
あの夢の中の人が言っていた『化け物に襲われれば、化け物が見えるようになる。』あの言葉は本当だったんだ。
でもこの数はおかしいだろ!
とりあえず、急いで学校に行こう。ここを通るのが怖すぎる。
俺は走る速さを少し上げた。
学校に着くと教室には桜がいた。こんなに早くにいるのんて珍しい。
でも、何か違和感がする。
あ…、そうか。いつもは元気だが、今は目が怯えている。
「かなた、昨日の夜から変なものがみえるの。お願い信じて…。」
桜の声はとても震えていた。
「それで、具体的にはどんなのが見えてるんだ?」
桜を落ち着かせつつ質問をした。
だいたいの事は予想はできるが、一応確認はする。
ここまで怯えてる桜を見るのは初めてだ。
いつもは天真爛漫な笑顔を振りまいているのに。
「なんか、足元が透けた人や車を通り抜ける女の子。現実離れしたことだけど本当なの信じて。」
やっぱり。
「大丈夫、俺は信じる。とゆうか、俺もその化け物見えてるし。」
そう言うと、桜が目に涙をためながら手を掴んでくる。
「あんな化け物見えてるのが、私一人じゃなかったんだ!」と大声で喜んだ。
こんな時言うことじゃないが、その時の桜はとても可愛かった。
桜が大声で喜んでから数分後。
「落ち着いた?」
「うん。ごめん、私だけこんなに喜んで。」
「しかたないさ。」
桜は昨日のことも覚えていないから、実質化け物を見るのは初めてだ。
やはり桜は、大声で喜ぶほど心細かったんだと思う。
人間があんなものを見たら普通は発狂してもおかしくない。
聞けば、あんな化け物が見え始めて親に相談したが真剣に聞いてくれなかったそうだ。
出来るだけ信じてくれる友達に話したかったのだろう。
「とゆうか、かなたはなんでそんな冷静なの?もしかして、前から見えてた?」
その質問はもっともだ。桜は怯えただけだが、それは桜の忍耐力が少し普通の人より高かったからだろう。
「そんな訳ないだろう。見えてたら桜や康介に話してるよ。」
正直、俺だって怖いよ。だって、いまだって窓の外にいるもの。だけど、好きな子の前で怯えるわけにはいかない。
それに昨日の帰路に着いた時には見えていたしな。
「でも、化け物たちについてはちょっとだけ知ってる。」
「早く教えて!」と桜は勢いよく聞いてきた。
「今はやめとこう。もうそろそろみんなが登校してくる時間だ。また、昼休みに話してやるから。」
耳を澄ませば、廊下からは足音が段々と増えてきていた。
桜が少し悩みながらも「わかった。でも、出来るだけ早く教えてね。」と返事した。
「あ、そうだ。このこと、俺以外には言うなよ。多分俺ら以外見えてないから。」
これ以上、このことを広げるのは不味いだろう。
言ったところで信じてもらえないだろうけどな。
「かなた昨日はどうだった?上手く告白できたのか?早く教えろよ〜。」
「わかったから、そのツンツンをやめろ!」
「そう怒るなよ〜。そりゃあ、親友の恋愛なんて極上のネ……真面目な話を聞かない訳には、行かないだろう。」
「今はネタって言いかけたよな?」
「そんな訳ないだろう。」
康介は昨日の告白のことを聞きたいんだよな…。
話のネタにされてたまるか!
というか、あんなこと話せるか!
「それでどうだったんだ?」康介が食い気味に聞いてくる。
昨日の機会を作ってくれたのは康介だ。結果を聞く権利はある。
しかたないな……。気は乗らないけど。結果だけは言おう。
「でき…て…よ。」
「え、なんて?」
「だから、できてね〜の!」
もうヤケクソだ!話のネタにされようが知ったことじゃない!
「わかるか?勢いでお前に『桜に告白してやる』って言ったができてない俺の気持ちが!お前がせっかく作ってくれた機会を棒に振った俺の気持ちが!」
「落ち着け!」
康介の声は無視だ!俺には聞こえない!このままぶちまけてやる!
仕方なく康介は俺の前に立つ。
そして額を衝撃が襲う。衝撃で顔が上に向く。
「落ち着いた?」
「本当にごめんなさい。」
康介の目の前で土下座をしていた。しっかりと頭を地面につけながら。
「とりあえず、今回は失敗に終わったかもしれないが、次頑張ろう。その時はしっかり手伝ってやるからさ。」
「ありがとう。」
俺こんな友達いていいのか?マジで康介は最高の親友だ!
土下座しながら、康介に心から感謝をする。
そして数秒立つと康介が「てか、土下座やめて!俺が恥ずかしいは!」
「あ、ごめん。」
窓の外には俺を見つめる一羽の鳥が、木に溜まっていた。その鳥の胸には
パソコンには土下座をしている男子と友達と会話している女子が映し出されていた。
『この少年とこの少女ですか?』
「その通り。この子たちは、昨日妖怪に襲われてるから、もう妖怪が見えてるはずだよ。」
電話をかけている男性と電話からは女性の声が聞こえる。
「この子達を連れてきて欲しい。やり方はいつも通りで。」
『かしこまりました。』
そう言うと電話がきれる。
「楽しみだね。陰陽師専用の録画機にノイズを入れたり、木の棒を黒炎で包み妖怪を倒したあの少年。さてどんな子なのかな〜?」
そんな声が広い部屋に響いた。
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