死に至る病

 暫く前、三女のうめのお腹を触っている時に違和感を覚えた。仰向けに寝かせて確認すると、見た目にはわからないが、おっぱいが腫れてしこりができているように感じる。私はすぐさまスマホを取り出し検索をかけた。


 「猫 おっぱい 腫れる」で検索すると、最初に「乳腺炎」がヒットした。主な原因は授乳、または発情期の偽妊娠とある。


 しかし、うちの子たちは、みんな避妊手術を受けている。このいずれの原因も当てはまらない。


 更に別の記事を読んでみる。するとそこに「乳腺腫瘍」の文字が。腫瘍……嫌な予感がする。


 腫瘍には良性と悪性がある。いわゆる癌だ。犬の場合、その比率は半々。猫の場合は……9割程度が悪性、とあった。


 鼓動が早まり、軽く吐き気を催した。


 私は手当り次第に記事を読みあさった。どれも同じことしか書いていない。悪性の比率が多少下がる程度だ。


 危険性が高いのは避妊手術をしていない高齢猫で、避妊手術は発情期を迎える前が望ましいとある。うめが手術を受けたのは生後半年の頃だから、うめにはどれも当てはまらない。


 じゃあ、この症状は何だ!


 私はうめを抱きしめた。涙が溢れてくる。


 うめは偶然その命を繋いだ。保護団体の人が施設に子猫を引き取りに行った際、たまたま保護されてきたばかりだったうめも一緒に引き取られることになった。うめは兄弟猫と一緒に捨てられていて、唯一生き残ったのだそうだ。施設の人がせめてこの子だけでも助けてやってくれと頼んでくれたらしい。


 そんなうめは、我が家にやって来るなり風邪をひいた。猫の風邪は放っておくと重症化することもある怖い病気だ。うちにはさくらやもももいるので早速病院へ連れて行ったものだ。


 それ以前からなのかその頃からなのか、うめは少し呼吸がしづらそうに見える時がある。動物は人間と違って口呼吸ができないので死活問題だ。そんな時はうめを抱いて神様に祈る。「どうかこの子に天寿を全うさせてやってください」と。


 うめが間もなく避妊手術を受ける頃のこと。目の様子がおかしかったので病院へ連れて行ったことがある。その時の診断が「ぶどう膜炎」、目の外側の組織の炎症である。


 このぶどう膜炎、単純なケガからも起こるが、恐ろしい病が隠れていることがある。それが「猫伝染性腹膜炎」。

 

 これこそ死に至る病である。

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