ももとの出会い 完結編

 今回、子猫を引き取る上で、私たち夫婦の間にひとつだけ条件が発生した。


 それは「まっすぐしっぽ」である。


 『目は口ほどにものを言う』という言葉があるが、猫の場合は喋れない口よりもしっぽの方がずっと雄弁である。さくらの長くしなやかなしっぽによる豊かな感情表現は、私たちの心をすっかり虜にしてしまっていた。


 そこで、猫を見る目を持つ男は、長いしっぽを手がかりにぐるぐると子猫を見て回った。さくらの時のことがあるので様子はわかっているし、何より、曲がりなりにも1年間猫を育ててきた実績がある。夫は自信に満ちていた。


 そして、ももを見つけたのである。大抵の猫は顔を人間の方に向けているためしっぽは見えにくい。ところがももは頭隠して尻隠さずの状態だったため、その美しく長いしっぽは無防備に晒されていたのだ。


 しっぽの美しさを語られて興奮する人はまずいないだろうけれど、敢えて言わせていただくと、うちの子たちはみんな美しい尻尾の持ち主だが、その中でももものしっぽは、長さと言いしなやかさと言いダントツのぶっちぎりである。


 夫はももも含めて何匹かの猫を抱っこした。前年のようなヘマはしない。曲がりなりにも以下同文。その夫でも、ももの抱っこはうまくいかなかった。


 それでもなおももを選んだ理由を、後に夫に聞いたことがある。すると夫はこう言った。


「ひとつには気の強いさくらに歯向かう猫ではダメだと思ったんだ。少なくとも、ももなら自分から攻撃はしないだろうってね。それから、このままじゃももは誰にも引き取ってもらえないんじゃないかって思ったんだよ。だったら僕が引き取ろうって」


 なんかすげーいい奴みたいだけど、実際は全然そんなことないョ(悪口はやめよう)


 そんなこんなで、ももは我が家の一員となったのであった。

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