声がデカい

 我が家でいちばんの美猫、ももちゃん。


 その毛並みは、これまで触ってきたどんな猫よりも艷やかで美しい。これはマジで自慢できるレベル。


 更に、程良く引き締まったボディ(お腹の皮がたるんたるんなのはご愛嬌)に、小さな顔、つぶらな瞳という、アイドル顔負けのスタイルの良さと可愛らしさを兼ね備えている。(因みに、さくらはがっしりタイプ、うめは胴長短足である)


 もちろん、美猫の条件(?)、長く真っ直ぐな尻尾も魅力的だ。


 そのくせビビりでドジっ子で、ついつい構いたくなってしまうところもアイドルの素質としては十分である。


 しかし、ただひとつ、可愛らしさとはかけ離れていることがある。


 それは、声がデカいこと。


 大きいなんてもんじゃなく、デカい。


 女の子のせいか、かん高くてデカい。とにかくうるさいのだ。


 ももは食べ物への執着が強く、あらゆることで不器用なくせに、こと食べ物に関しては誰よりも素早い。執着が強いせいで要求も強く、たまに帰りが遅くなって給餌が遅れた時などは、この世の終わりとばかりに鳴き喚く。


「お母さん、お母さん!お腹が空いたにゃあ!死にそうにゃあ!早くご飯にしてにゃあああああ!」


 ああ、もう、うるさいっ!


 先月、ワクチン接種のために動物病院に連れて行った時も、待合室で


「ここはどこにゃ!怖いにゃ、帰りたいにゃあああああ!」


と鳴きまくり、他の飼い主さんの失笑を買っていた。更に診察室でも、


「嫌だにゃ、痛いにゃ、殺されるにゃあああああ!」


と叫び続けて先生を呆れさせただけでなく、待合室に戻ると、


「おたくの猫ちゃん、随分と大きな声で鳴いてたわね。」


と声を掛けられる始末。きっと、待合室中にももの悲鳴が響き渡っていたのだろう。


 普段は至っておとなしく、控え目なもも。


 これもトップアイドルに不可欠なギャップ萌えと言えるのだろうか……

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