猫飼いたい

 幼い頃から猫がいる環境で育った私は、いつか猫を飼いたいと願っていた。だから、念願の一軒家に越してからずっと、その機会を伺っていた。


 一方、動物は絶対に飼わないという家庭で育った夫は及び腰。因みに、母親の苦手なものを子どもも苦手になるという傾向があるらしい。もちろんうちの子は猫好きだ。


 そこで私は、猫がどれほど可愛いかという刷り込みから始めた。家に帰れば頭をこすりつけて歓迎してくれること。膝に入ってゴロゴロ喉を鳴らすこと。冬になれば布団に潜って一緒に寝てくれること等々。それらは彼にとっては全く未知の出来事であって、なかなか理解してもらえる話ではなかった。


 イメージを膨らませるため、私は彼に地元の保護団体のホームページ見せ始めた。そこには愛らしい子猫たちが、クリクリとした瞳でこちらを見つめている写真や、膝の上で寛いでいる写真、他の猫と戯れている写真がたくさんあった。それらはカレンダーや写真集のような洗練されたものではなく、生活感溢れる室内で撮られたもので、猫との生活を容易に想像させた。


 この作戦は、ボディブローのようにジワジワと効き始めた。初めは関心のなかった夫が、段々と好みを言い始めたのだ。「この子可愛いね」と。


 私はそっと彼の耳元で囁いた。


「一度、見に行ってみない?」

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