ポケモンGO/TRIAL

@quan2100

第1章 エリア争奪編

とある高校の教室…


「やれ!カイロス!」


「ば〜か!俺のピジョンには効かねえよ!返り討ちにしてやれ!」


そこではポケモンバトルの真っ最中、教室のほとんどの生徒がバトルの様子を見守っていた。

しかし、端っこで1人、窓から外を見る少年がいた。


「ピジョン!カイロスを飛ばしてやれ!」


ピジョンの羽ばたきによってカイロスが押され始める。


「耐えろ!踏ん張れ!」


踏ん張るカイロスだが、ピジョンの風圧に負け、その身は窓の方へと飛ばされた。


「うわぁ!?」


自分の視界に飛んできた巨大な物体に少年は声を上げた。


[ピジョン/ヒロト WIN]


「よっしゃ〜!」


バトルの勝者への歓声と共に、少年への笑い声が響いた。


「何ビビってんだよ!ただの立体映像だっての〜」


「あぁ…だよな…」


「お前、本当にポケモンバトル知らないのな」


「そっ…そうだな」


少年はクラスメイトをあしらい、また窓の外を見た。


「戦わせるなんて可哀想じゃん…そんなことできるかよ…」


放課後、生徒たちが続々と校門を出る。繁華街の方に向かう者もいれば、反対方向の駅へ向かう者もいた。


「レッカ〜、レッカ!」


男性教師の叫び声で、彼は机から飛び起きた。


「はい!あっ、すいません先生」


「もう閉めるから、ほら、荷物まとめろ」


「はい…!」


校門を出てて、ため息を吐く。


「はぁ…居眠りしてこんな時間か…」


レッカが外に出た時には、すっかり暗くなっていた。

彼は池袋駅を利用しており、高校から駅までは西口の繁華街を通って帰宅する。西池袋の街もすっかり夜の装いになっていた。


「相変わらず空気悪りぃなぁ…」


うつむきながら歩いていると、路地の奥に何かの気配を感じた。


「何だ今の?トカゲ…?」


路地を進んでいくと、そこには黒い服に身を包み、Rと書かれた帽子を被った男が立っていた。


「何だお前、もしかしてヴァーラーのトレーナーか?」


「トレーナー?何のことだよ」


「とぼけるな!やろうってんなら相手してやる!早くポケモンを出せ!」


(あぁ、ポケモンのことか…)


男の言葉からレッカは理解した。


「生憎なんだけど、俺ポケモン持ってないんですよ。じゃあ、そういうことなんで…」


そう言って振り返って去ろうとした瞬間…


「嘘つけ!ヒトカゲ!やっちまえ!!」


「えっ…」


男の掛け声の直後、男のポケモンの吐いた火の玉がレッカの髪先をかすめた。

その炎にはしっかりと熱気があり、毛先は煙を上げながら焦げ付いていた。


「嘘だっ…ポケモンはデータだけの存在じゃ…!」


「お前たちの間じゃまだそうだろうな!!ヒトカゲ!もう一発かましてやれ!」


二発目の炎は確実にレッカの頭を捉えていた。


(もしかして…俺ここで死ぬのか…?)


彼が死を覚悟した…しかし


「バクフーン、防ぎなさい」


背後から響いた冷めたような女性の声、その声に続いて、レッカの目の前を巨大な炎が包んだ。


「うっ…熱っ…!」


頭を庇ったレッカの腕に火の粉が当たる。

炎の中から現れたのは、彼と同じくらいの背丈を持つ大きなポケモンだった。


「あなた大丈夫?」


「あっ…はい…」


「なら良かった。にしても、一般のトレーナーにも手を出すなんて、ロケット団も落ちたものね」


彼女に睨まれた謎の男は目を見開いた。


「げっ、ヴァーラーのリーダーかよ!?こいつは無理だ、ずらかるしかねぇ!!」


「逃がすわけないでしょう!そのヒトカゲ、保護させてもらうわよ!」


彼女の大きなポケモンは、男の手元に向かって炎を吐いた。男が手にしていた端末の画面は溶け、機能は完全に停止した。


「くっ…覚えてやがれ!」


そう吐き捨てると男はそそくさと逃げ出した。


「またロケット団なんて、奴ら何か企んでるのかしら?」


「あの〜…」


「あぁ、巻き込んでしまったわね、失礼。私はチームヴァーラーのリーダー、キャンデラよ」


「あっ…レッカです…あの、ポケモンってデータなんじゃ…?」


「そうね、本当は機密事項なのだけど、お詫びも兼ねてあなたには説明するわ。このヒトカゲはシャドウポケモンといって…」


キャンデラの話を遮るように、彼女のスマートフォンへ着信が入った。


「もしもし、目白駅付近にロケット団ですって?」


彼女は数秒間レッカを見つめて、再び話し始めた。


「わかった、今から向かうわ」


キャンデラは通話を切り、ポケモンをスマートフォンへ仕舞った。


「ごめんなさい、用事が出来てしまったわ」


「はぁ…」


「あなた、自分のスマートフォンはある?」


「あっ、えっ…はい」


レッカはカバンからスマホを取り出す。


「失礼」


キャンデラは彼のスマホを受け取ると操作を始めた。しばらくすると、目の前の小さなポケモンがレッカのスマホへと吸い込まれた。


「これでいいわ。メモの一番上に住所を添付しているから、明日以降、そこに今のヒトカゲを届けてくれるかしら?話の続きもそこで聞けるわ」


「えっ…えぇ!?」


「では失礼。その子のこと、頼んだわよ」


そう言い残すと、彼女も角を曲がり姿を消した。


「いきなり何だったんだよ…住所ってどこだ?…箱根!?」


レッカは今の出来事に困惑したまま天を仰いだ。


「行くしかないのか…帰ったらこの髪の毛切らなきゃな…」


またため息を吐き、彼は駅へと向かった。

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