アフターストーリー24 卒業

少しずつ暖かくなり始めた3月某日。

今日は川野辺高校の卒業式だ。


去年は小宮先輩達を送り出す側だったけど今年は俺達が卒業する。

本当ついこの間の様だけど1年経つのは本当に早い。


「何だかあっという間に卒業だな」

「うん。ケンちゃんが帰って来てからは凄く日が経つのを早く感じたよ」


少し早く学校に着いた俺と楓は式の準備が行われている体育館を眺めていた。

いつも部活で使っている体育館も今日は卒業式ということで沢山の椅子が並べられ、いつもと違う雰囲気だ。



数日前のバスケ部。

栗田と恩田、それに鮎川や大室が中心となって俺達の引退試合を開いてくれた。

結果は俺達の圧勝・・・とまではいかなかったけど何とか男女ともに3年生チームの勝利に終わり体面を保つことが出来た。

1年の時からレギュラーに入りディフェンスの要として活躍していた栗田。

堅実なプレイと得点力でチームに貢献してきた日吉と堀田。

抜群の運動量と明るいキャラでチームを盛り立てた横山。

そして、途中入部ながら抜群のバスケセンスとテクニックを持った恩田。

それに平野をはじめとした期待の1年達。

俺達が抜けた後もチーム一丸となって頑張ってくれている。

本当頼もしい後輩たちだ。

俺達は卒業するけど来年も全国大会目指して頑張ってくれそうだ。


ちなみにコーチの亮兄や三上さんも就職活動に入るのでしばらくコーチ業を休業するらしいんだけど、バスケ部のOBで裕也の尊敬するプレイヤーでもあった雪村先輩が当面の間コーチとして参加してくれるらしい。

俺は親睦会で挨拶した程度の面識だけど、今ある川野辺高校のセットプレイを作り出した凄い人らしいし戦術面の向上が期待できそうだ。


楽しい思い出の沢山詰まった部活。

裕也や福島、長谷部、吉見、高田、由良。

それに藤原や笹原といった他校の知り合いも出来た。

本当バスケ部に入ってよかったな。


「俺は2年だけしか通ってないけど、この高校でいろんな思い出が出来たな」

「うん 楽しいことも辛いことも沢山あったよね。

 でも・・・私にとってはケンちゃんとの思い出が一番かな♪」

「そうだよな楓との思い出も沢山出来たよな」


バスケ部もだけど・・・確かに俺にとっては楓と再会し同じ時間を過ごせたことが高校生活一番の思い出なのかもな。


「ケンちゃん。そろそろ教室行こ」

「そうだな。折角早く来たんだしな」


体育館からの渡り廊下を歩き俺達の教室に入ると既に半数以上のクラスメイトが着席し久しぶりに会う仲間達との会話を楽しんでいた。

最近は自由登校だったからクラス全員が集まるのは久しぶりだ。


「おはよ裕也」

「オッス健吾」


裕也とこうして朝の挨拶をするのも今日で最後か・・・

そんな事を思いながら席に座り、いつもの様に他愛のない話で盛り上がる。

本当こうしていると今日が卒業式なんて感じはしないよな。


と、教室の扉が開き担任の田中先生が入ってきた。

騒がしかった教室が一瞬静かになり先生に注目が集まる。


「あ~こうしてみんなと顔を合わせるのも今日が最後かと思うと先生もすごく寂しい」

「本当かなぁ~」

「こら!茶化すな清水。寂しいのは本当だぞ。

 まぁ3年の担任っていう責任から解放されるってとこも大きいけどな♪」

「ひでぇ~」

「いや プレッシャーあるんだぞ結構」


確かに3年は受験だったり就職だったりと生徒も大変だけど、それをフォローする先生達も大変だよな。


「まぁそれはそれとして、みんな本当に卒業おめでとう。

 3年間、この川野辺高校で色々な事を学び多くの人もと知り合い思い出を作ってきたと思う。

 部活に打ち込んだり勉強やスポーツを頑張ったりしてきたと思うが皆努力に見合った成長できたはずだ。

 高校を卒業し明日からはそれぞれ別の道に進むかと思うが、この川野辺高校での経験を活かし自分の夢に向かって羽ばたいてくれればと思う」


[パチパチパチパチ]

ありきたりの言葉なのかもしれないけど普段軽めの田中先生が俺達に向かいあって真剣に送ってくれた言葉に自然と拍手が起こった。

俺もちょっと感動したかも。


「じゃ じゃぁそろそろ時間だから体育館へ移動するぞ」


予想外の拍手に少し照れたのか、慌てた感じで先生は体育館への移動を促した。

いよいよ卒業式か。



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司会を務める相良(小島)先生の合図を受け俺達は田中先生を先頭に体育館の中へと入場した。

昨年も卒業式には参加したけどやっぱり送る側と送られる側では緊張感も違う。

体育館の中には2年生の他に卒業生の家族も見える。

親父達も何処かに居るんだろうけど・・・探している余裕はないな。



式は校長先生や来賓の方々からの祝辞、校歌斉唱、卒業証書授与・・・と滞りなく進んだ。

そして、在校生からの送辞を受けての答辞は元生徒会長の赤沢さんが行った。

1年間生徒会長として活動してきただけあって堂々とした振る舞いで式を締めてくれた。

ちなみに赤沢さんは渋川さんや大崎さん、それに早瀬さんと同じ都内の私立大学に進学するらしい。何気にあの4人は仲が良いんだよな。


式が終わり沢山の拍手に送られて体育館を出た俺達は、一旦教室へと戻りクラスメイトと残り少ない時間を思い思いに過ごした。

この後、ショートホームルームを終えて校舎を出れば俺達の高校生活も終わりだ。


「卒業式も終わっちゃったね」

「だな」

「これで高校生活も終わりなんだと思うと何だか寂しいね」

「確かにな。でも新しい生活の始まりでもあるんだぜ。

 大学に入れば勉強することも沢山あるし、新しい出会いだってあると思う。

 それに楓もバスケは続けるだろ?大学のバスケ部はに先輩達や亮兄、雫姉も居るし藤原や夏川さんもチームメイトだ。何だかワクワクしないか?」

「・・・そうだね。雫姉や夏川さんとチームメイトになれると思うと楽しみかも」


そうだ。高校生活は確かに今日で終わりかもしれないけどこの先俺達には新しい生活が待っている。


「健吾!小早川!みんなで記念写真撮ろうぜ!」

「おぅ今行く。行こうぜ楓!」

「うん!」


終わりじゃなく始まりだ。


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アフターストーリーはこの後もう1話だけ続編とのつなぎ的な話を書いて完結にする予定です(週末位に何とか・・・)

また健吾達の大学生活を描いた続編「恋人たちの四重奏」も準備中です(タイトルは変えるかも)こちらは多分3月中には開始できるかと思いますので投稿の際にはまたよろしくお願いいたします。



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