アフターストーリー17 誕生日の夜
「・・・どうしたもんか」
11月も終わりが近づいてきたとある日の夕方。
俺は受験勉強の気分転換も兼ねて慣れ親しんだバイト先でもあるラウムでコーヒーを飲みながら1人悩んでいた。
今週末は俺と楓の誕生日だ。
去年は2人で六景島でデートを楽しんで小早川家でお祝いもしてもらい・・・
再会して初の誕生日ということもありお互い張り切って結構豪華な誕生日としてしまった。
それだけに今年どうするか本当悩ましい。
「真剣な顔してどうかしたの?」
「あ、島田さん」
「悩み事があるなら少しくらいはお姉さんが相談にのってあげるよ♪」
バイトリーダーの島田さん。
歳も近いし話しやすいし凄く頼りになる姉御肌の人なんだけど・・・内容的に相談しずらいよなぁ・・・・彼氏できないっていつも愚痴ってるし・・・
「え、あ、いや大したことじゃないんで大丈夫ですよ」
「そぉ?大丈夫ならいいけど」
「心配してもらってありがとうございます。
そういえば島田さんも来年は3年ですよね。就職とかどうするんですか?」
「就職ねぇ~~」
そう言いながら島田さんは大きな溜め息をついた。
上手くいってないのか?
「島田さんこそ悩み事ですか?」
「そうなのよねぇ~就活で親と揉めちゃって・・・」
「ご両親と?」
「うん。私ここでバイトして飲食の業界が自分に向いてるのかなって思い始めてね。就活もその方向で考えてたんだけど、家の親は安定した商社や公務員が良いんじゃないかってね。事務仕事とか嫌いではないんだけど・・・」
なるほどね。
確かにご両親としては安定した仕事についてもらいたいと思うよな。
でも・・・島田さんはやりたいことがあるんだよな。
だとしたら
「お世辞抜きで俺も島田さんは接客業とか向いてると思いますよ。
リーダーとして場の仕切りも新人教育とかも上手いですからね」
「ほんと?そう思う?」
「思います!だから・・・無責任なことは言えませんが後で後悔しないためにも自分の思う道に進むのがいいんじゃないでしょうか?」
「・・・そうだね。やっぱり自分のやりたい事目指してみた方がいいよね。
うん。もう一度両親説得してみるよ♪ ありがとね田辺君」
「いえいえ。いつも島田さんにはお世話になってますしね」
「うん。ってお客さんだ。
じゃ、ちゃんと勉強して来年は楓ちゃん達と一緒に私の後輩になりなさいよ!」
「は~い」
何やらスッキリした顔で接客に戻る島田さん。
・・・俺の相談を聞いてくれるとか言ってたのにいつの間にか俺の方が相談にのっていたような。
でも"自分の思う道"をか・・・そうだよな。
自分で言っておいてなんだけど俺も変に体裁考え過ぎてたかもな。
楓に自分の素直な気持ちを伝えてお祝いすればいいんだよな。
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そして迎えた誕生日当日。
俺は楓とお洒落なレストランに・・・居るわけではなく実家のリビングに居た。
「それでは!健吾それに楓ちゃん!誕生日おめでとう~!!」
「「おめでとう!!」」
今年の誕生日は俺の両親が帰国してから初ということもあり新居に小早川家のみんなや雫姉と亮兄を呼んで俺と楓の誕生日会を開いていた。
楓と2人きりというのも考えたけどこういうのもたまにはいいかなって。
まぁ高校生にもなって誕生日会も無いよなとは思ったけど・・・
ちなみに去年は小早川家のみんなに祝ってもらったけど、親父達に誕生日祝いをしてもらったのは本当何年振りだろう。
母さんと五月おばさんが張りきって作った料理が幾つもの大皿に盛られ、大樹おじさんが買ってきてくれた大きな誕生日ケーキやフルーツがテーブルを彩る。
そして・・・自分達が飲みたいだけだと思うけど親父が海外で買い込んだ珍しい酒がキッチンのカウンターに大量にならんでいた。
雫姉と亮兄も興味津々で酒を見ては親父に質問している。
あの2人もお酒好きだからなぁ~
・・・とりあえず飲みすぎだけは注意して欲しいところだな。
「あ、おばさん。私もお手伝いしますよ」
「いいのよ♪今日は楓ちゃんも主役なんだからゆっくり座ってなさいな」
空いたお皿やコップを片付ける母さんに楓が声を掛ける。
祝ってもらっている立場ではあるけどやっぱり俺の家だし気になるんだろうな。
「母さんもああ言ってるし楓も座って食べようぜ」
「うん・・・でも何だか悪いような・・・」
「気にしない気にしない♪ おじさんが買ってきてくれたケーキも美味しいぜ」
「ほんと?じゃ私も食べちゃおうかな~」
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夕飯も兼ねて夕方から始めた誕生日会。
気が付けば、親父達は良い感じに酔っ払っていた。
雫姉と亮兄に至ってはダイニングテーブルに突っ伏して寝ている・・・
飲みすぎは身体によくないよ~
俺達の誕生日と言いつつ親父達は親父達で盛り上がっているようなので、俺と楓は少し外の空気を吸おうかと一緒に外に出た。
昼間は暖かだったけど夜はやはり少し肌寒い。もう11月も終わりだもんな。
「・・・楽しめたか?」
「うん。楽しかったよ♪
雄一おじさんも誠子おばさんも大好きだしお祝いして貰って凄く嬉しかった」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。まぁうちの親も昔は娘が欲しかったとか良く言ってたから楓が居て嬉しいんだよ」
「ふふ娘と思ってもらえてるんだ♪」
「嫌じゃないか?」
「当たり前でしょ! ケンちゃんが嫌がっても私がケンちゃんを逃がさないんだからね」
そう言いながら俺の腕に抱き付いてくる楓。
本当・・・可愛いな俺の彼女は。
大丈夫・・・おれはもう何処にも行かないよ。
そう思いながら俺は立ち止まり鞄からラッピングされた小箱を楓に渡した。
「楓。これ誕生日プレゼント」
「え!プレゼント?私に?」
「あぁ」
「開けていいかな?」
「いいよ」
そう言いながら小箱を開ける楓。
「あ、これって」
「前にショッピングモールに行ったとき"可愛い"って言ってただろ?
楓に似合うかなって」
結局プレゼントはイヤリングにした。
前に楓とデートしたときに珍しく立ち止まって見てたんだよな。
色々と考えたけどアクセサリーは好みもあるし本人が気に入ったのがいいかなってね。
「覚えててくれたんだね」
「去年ジュエリーボックスを贈っときながら肝心の中身の方プレゼントできてなかったからな・・・」
「ありがとう大切にするね♪」
嬉しそうに俺に微笑む楓。
また来年もその先もこの笑顔を大切にしたいな。
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更新が遅れ申し訳ありません。
話の大枠は結構早い段階で出来ていたのですが文章がまとまらず・・・
次回は出来るだけ週一更新で頑張ります。
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