アフターストーリー16 文化祭

夏休みが終わり2学期に入った。


川野辺高校は3年生の2学期以降は受験勉強に向けた時間割にシフトされる。

学業優先ということで学内のイベント系は自由参加とされ、通常授業の他に受験に向けた個別授業や講習も行われる。


ということで部活も引退し時間には余裕が出来たはずなんだけど、時間はあっという間に過ぎていった。


そして今日は・・・


「ねぇケンちゃん。最初に見に行くのは小春と瑞樹のところでいいよね?」

「いいよ。確かメイドカフェやるんだよな?」


川野辺高校文化祭。

3年生は自由参加なんだけど、勉強の息抜きということで今日は楓と2人で遊びに来ていた。紅葉達も1年生で出店しているはずだし、裕也と浜野さんも同級生数人に声を掛けて屋台を出しているらしい。

そして大室さんと鮎川さん達のクラスはメイドカフェを行っているとの事だ。


去年は俺にとって初の文化祭だったわけだけど今思い出しても楽しかった。

本物のお店は行ったことが無いけど、メイドカフェと執事カフェを行うってことで夜遅くまでみんなで接客の練習したり内装工事したりとか。

いい思い出だ。

それに・・・楓達のメイド服姿も中々に眼福だったし♪

あ、そういえばあのメイド服って確か買い取ったんだよな。

今度着てもらおうかな・・・


「ケンちゃんどうかした?ニヤニヤして」

「な 何でもないぞ。あ、メイド服や食器類って去年の使ってるんだよな?」

「うん。大量仕入れしたからね。普段は演劇部と料理部で保管してるけどメイドカフェとかって大体どこかのクラスがやるから希望があれば貸し出してるみたい」

「結構いいもの買ってたしな」

「うん。流石麻友お嬢様って感じだったよね。服の素材もだけど食器の質とか目利きが出来てたもんね。それに安く発注できる人脈とか」

「そうだよな」


渋川さんは大学卒業後はお父さんの会社を継ぐんだろうか?

大学は結城と一緒に受験するようなこと言ってたけど。


そんな会話をしながら2年生の教室がある3階に到着すると


「「いらっしゃいませ"ご主人様"それに"奥様"」」


とにこやかにメイド姿の鮎川さんと大室さんが出迎えてくれた。

階段横の2年A組 鮎川さんと大室さんが居るクラスだ。

去年は俺達もこのクラスだったんだよな。


ん?でも"奥様"? そこは"ご主人様"と"お嬢様"じゃないのか?


「ケンちゃん"奥様"だって♡」

「はは 鮎川さん。そこは"お嬢様"じゃないの?」


「去年・・・私と芳君が先輩達のお店に行った時に楓先輩と綾子先輩に言われたんですよ。友達が居たのに凄く恥ずかしくって。

 だから仕返しにって思ったんですけど・・・・何だか逆効果でしたね。。。」


まぁ楓は恥ずかしいというよりむしろ嬉しそうだよな。。。


「・・・確かに。あ、2人ともメイド服凄く似合ってるよ」

「ありがとうございます!折角ですので中で休んでってください!」

「あぁ。行こうか楓」

「うん♪」


上機嫌の楓と教室内に入るとポップで可愛らしい内装のカフェスペースが作られていた。装飾品なども細かく作られていて凄く綺麗にまとまって俺達が作ったメイドカフェとはまた違った雰囲気だ。

テーブルや食器類も去年の使いまわしだけどいろいろ工夫してるんだな。


「いい雰囲気の店内に仕上がってるね」

「うん。凄く可愛くて素敵」

「ありがとうございます♪DIYが得意だったり手先が器用な子が結構多くて」

「へぇ~」


俺と楓は、鮎川さんに案内された席に座りコーヒーとケーキを頂いた。

一般教室での飲食だけど、カウンターに入った大室さんが淹れるコーヒーは喫茶店でバイトしていることもあり中々本格的な味だった。

そういえばマスターに淹れ方習ってたもんな。


結構早い時間に来たこともあり結構長居してしまったけど、徐々にメイド姿の女子目当てで男子生徒が増えてきたので、俺と楓も教室を出ることにした。


「じゃ、そろそろ行くからこの後も頑張ってな」

「はい♪あ、幸や美里のところにも遊びに行ってあげて下さいね」

「あぁ行ってみるよ」


ということで次の目的地も決まったということで教室を出て1年生のフロアへ。

1年生たちにとっては初の文化祭ということで2年生のフロアよりも賑やかで全体的に明るい雰囲気だ。


「楓、紅葉達ってA組だよな?」

「うん。幸ちゃんと紅葉と高坂君はA組で美里と芳江、平野君はC組だね」

「じゃ、まずはA組行って見るか」

「そうだね。確か紅葉達は謎解きゲームやるとか言ってたよ」

「へぇ流行ってるもんな」

「うん。幸ちゃんが考えたのとかもあるらしいよ」

「それ凄いな・・・」


ということでA組の前に来たわけだけど・・・

何この行列・・・教室に入り切れない生徒が廊下で列を作ってるぞ。

そんなに面白いのか?


「・・・メチャクチャ繁盛してるな」

「うん。凄いね。これ」


列を見ると近隣の中学生や高校生の制服も見える。

時間的に他校の招待客なども来ているんだろうけど宣伝とかしてたのかな?

楓と2人、廊下から教室の中を覗き見していると


「あ、ケン兄ちゃん、お姉ちゃん」


関係者用とされている教室の後ろ側の扉から紅葉が顔を出した。

案内役なんだろうか?制服ではなくスーツっぽい服を着ている。


「凄いね大盛況じゃない!」

「うん。こんなに人が来るとは思ってなくて・・・」

「何か宣伝とかしてたのか?」

「昨日幸がSNSで宣伝したみたいなんだけど、こんなに来るとは」

「SNSか。それにしても凄いよな」


「本当は案内してあげたかったんだけどちょっと無理そう」

「案内は気にしなくていいよ。俺達は他見て来るな」

「うん。ゴメンね」

「じゃ大変だろうけど頑張れよ」


あれだけ人気があるとちょっと気にはなるけど、俺達は一旦A組を離れ美里ちゃん達のC組へ行くことにした。

C組はダーツやストラックアウト等を行うゲームセンターだ。

こちらは特に行列は出来てなかったので係りの子に声を掛けすぐ中に入れた。


「あ!田辺先輩に小早川先輩!来てくださったんですね」

「よぉ平野、藤原、葉山」

「遊びに来たよ~」


教室内にはダーツゲームが2セットと小さい子でも出来るような輪投げゲームや射的、宝釣りといった縁日的なゲーム。それに教室の一角にネットを張ってのストラックアウトがあった。

A組の謎解きほどではないけどどのゲームも少し待ちが出来る程度には賑わっている。それに小さい子にはこっちの方が楽しめそうだ。


「先輩達は何で遊びますか?」

「そうだなぁ~ 楓どれにする?」


「ふふケンちゃん ダーツで勝負よ!」

「ほう~ 俺に勝てるとでも?何か賭けるか?」

「じゃぁ負けた方が今日の夕飯作るって言うのでどう?」

「よ~し。乗った」


「・・・・先輩達っていつも一緒に夕飯食べてるんですか?」(葉山)

「う~流石は私の推しっすね」(藤原)

「恋人といつも一緒とか本当うらやましいです」(平野)


「いや、、、まぁ、、、そのなんだ」


ちなみに勝負は接戦だったけど俺の勝ち。

帰宅後は楓に美味しい夕飯を作ってもらった。


あ、裕也達の屋台に行くの忘れた。。。

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