アフターストーリー14 夏祭りの夜に

川野辺天神祭り。

俺と楓はこの日のために購入したお揃いの浴衣を着てお祭り会場に来ていた。

相変わらずの混雑具合だ。

例年規模が拡大されているとは聞いてたけど、多分去年よりも多くの人が祭りに来ている様に見える。


「まずは天神様にお参りかな」

「そだね。天神様には色々と願い事をかなえてもらってるしね」


楓は俺との再会を天神様に願掛けしてくれてたんだよな。

正直なところ去年日本に帰ってくることは確定していたけど川野辺に帰って来れるかは直前まで決まっていなかった。

親父が横浜支店に戻れるか未確定だったからね。

最終的に横浜支店に復帰が決まり俺も川野辺高校の編入試験を受けることになったわけだけど、親父ってああ見えて結構仕事は出来るから、あちこちの支店から引き合いも高かったんだよね。

だから、川野辺に来て楓と再会できたのは天神様のおかげなのかもしれないな。


「うわ~ ここも人が沢山だ」

「あぁ それもカップル率が高めだな!!」


恋愛成就の神様と言われるだけあって、神社の境内はカップルや願掛け目的の女性などであふれかえっていた。テレビや雑誌の力って凄いな・・・


とり急ぎ、参拝の列に並んだ俺達は何とかお参りをすませ境内を後にした。

恋愛の神様ということで受験のお願いをしても効果があるかは微妙だけど"楓と一緒に大学に通えますように"とはお願いしておいた。

神様頼みますよ♪



境内を離れのんびりと参道を歩きお祭り会場へと戻ってきた俺達は、屋台をめぐりお祭りグルメを楽しんだ。


「ケンちゃん。私たこ焼き食べたい!」

「いいねぇ。俺も食べたいかな」


同じたこ焼きでもお祭りの屋台で食べると何だか美味しく感じるんだよね。


「いい香り~焼き鳥も食べたいかな」

「美味しそうだけど あんまり食べ過ぎるなよ」


と、目に入った焼き鳥屋台に近づいたところで突然声を掛けられた。


「よぉ 祭り楽しんでるか」

「あ、相良さん。それに先生も」

「こんばんわ!ご無沙汰してます」


相良さんと美香先生。

2人共お酒を飲んでいるのか少し顔が赤いけど、相良さんはスーツ姿だし仕事帰りに待ち合わせしてきたのかな?


「今年は小早川さんだけじゃなくて田辺君も浴衣なのね。似合ってるわよ」

「ありがとうございます!ケンちゃん似合ってるって♪」


やっぱり人に褒められると嬉しいよな。

でも、お世辞抜きで今日の楓の浴衣姿綺麗だよな。

楓は元々スレンダーでスタイルがいいってのもあるけど、今日は髪をアップにしているのがまた何というか・・・色っぽい。

自分の彼女ながらつい見惚れてしまう。


「どうしたの?ケンちゃん」

「い いや な 何でもない(見惚れてたとか恥ずかしくて言えるかよ・・)

 あ、相良さんは仕事帰りですか?」

「ん?あぁ駅前で美香と待ち合わせしてな。俺も地元民だしこの祭りは毎年楽しみにしてるんだ。後で雄一や大樹さんとも待ち合わせしてるんだぞ」

「え?親父達も来るんですか?」


親父達って今日仕事じゃなかったっけ?

でも、そうだよな。親父だってこの町の出身なんだから祭りは来たいよな。


「もうそろそろ来ると思うけど待ってるか?そこの焼鳥屋台で待ち合わせてるんだよ。ほら、俺の結婚式に来てただろ?焼鳥屋の北里が屋台だしてるんだよ」

「あ、北里さんですね。あの後一回親父にお店連れてってもらいました!」

「おっそうなんだ。美味しいだろあいつの焼き鳥」

「はい」


そうそう。うちの親と小早川家の面々で食べに行ったけど美味しかったよなぁ~


「あ!ケンちゃんそろそろ時間だよ」

「ん?もうそんな時間か。すみません。焼き鳥は食べたいところなんですが、友達と待ち合わせしていて」


「おっそうか。じゃあ仕方ないな。焼き鳥は土産ってことで雄一と大樹さんに渡しておくよ」

「「ありがとうございます!!」」

「ふふ 2人とも気を付けてね♪」

「はい 先生も相良さんとお祭り楽しんでくださいね~」


先生達と別れた俺と楓は裕也達と待ち合わせをした神社の社務所前まで移動した。まもなく花火が始まるということでお祭り会場の人も少しずつ増えて行っている。

社務所に近づくと浴衣姿の裕也と浜野さんが仲良さげに談笑していた。


「裕也、浜野さん!」

「おっ田辺ご夫妻のご登場かな」

「もぅ~清水君ったら♪ それはまだ♪」

「・・・相変わらず小早川は飛ばしてるな」

「そういう裕也達もお揃いの浴衣じゃんか」


裕也と浜野さんの浴衣は濃紺の落ち着いた色合いに花火をモチーフとした柄がついている落ち着いたデザインだ。


「そういう健吾達もお揃いじゃん」

「まぁな去年は福島達にやられたからなぁ~」

「だな。正直羨ましかったもんなアレ」

「うん。何だか負けた感が・・・」

「だよね~」


裕也達も俺達と同じような事思ってたんだな。

そういえば・・・


「福島たちはまだなのか?」

「さっき一回来たんだけど、まだ早いからって綿あめ買いに行った」

「綿あめって・・・幾つだよ」


と噂をしていると村田さんと福島が戻ってきた。


「いいじゃない。好きなんだから」

「はは そうだな 美味しいもんな」

「あぁ~田辺君私の事、お子様とか思ったでしょ!!」

「そんな事無いって♪」

「何だか綾 可愛い♪」

「もぅ楓まで! って3人もそこ笑わない!」


と綿あめを食べながら周りに突っ込む村田さん。

村田さんって割と童顔だし絵的には綿あめ似合うな。

などと失礼なことを考えてたら睨まれた・・・ごめんなさい。


「さて、みんな揃ったし、そろそろ花火の時間だよな。例の場所行くか?」

「そうだな、今からならまだ間に合うよな」


去年の祭りで裕也に案内してもらった見晴台。

会場からは少し離れるけど河川敷から打ち上げられる花火までしっかり見れる穴場スポットだ。


見晴らし台に着くと俺たち以外にも数組のカップルや家族連れが来ていた。

去年は俺達だけだったけど、良く見えるもんなここ。


「おっ始まるみたいだぜ」


[ド~ン]


河川敷から花火を打ち上げる大きな音と共に夜空に大輪の花が咲く。


「綺麗・・・・」


皆で空を見上げる。


「・・・また来年もみんなで祭りに来ような」

「そうだな 約束だ」

「あぁ」

「うん 約束だよ!」

「そうだね♪」

「楽しみだね!」


あと半年で俺達も川野辺高校を卒業する。

皆それぞれの進路に向かって巣立っていくけど・・・これで終わりってわけじゃないしお別れってわけじゃない。


来年集まるときには一回り大きくなって皆に会いたいな。


********************

誤字脱字のチェックと改稿も並行して始めたので更新が遅れてしまいました。。。

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