アフターストーリー11 -全国大会へ➄-

「何だか・・・緊張するな」

「あぁ・・っていうか会場の応援ほとんど海応寺じゃん」

「・・・完全アウェーな感じだな」


今日決勝戦を戦う海応寺高校は決勝戦常連の有名校だ。

大会ナンバー1との呼び声も高いPGの守屋と得点王のSF横谷、それにリバウンドに絶対の自信を持つセンター高橋、3ポイントの名手SG島田と全国区のタレント揃い。対する俺達は、ダークホースとか言われているけど正直無名だ。


「いいか!この会場の大半は相手の応援団だ。この大歓声の中で俺達が勝ったら最高に気持ちいいと思わないか!」

「「おぉ!!」」

「この会場の観客を黙らせてやろうぜ!!」

「「おぉ!!」」

「川野辺ファイト!!」

「「おぉ!!!」」


・・・福島。気合は入ったけど、何だか顔つきが少し悪役チックになってるぞ。


「ケンちゃ~ん頑張って!!」

「裕也勝って祝杯よ~!!」

「田辺~気合入れてけ~!!」


楓に浜野さん。それに梶?

あいつも応援に来てくれたのか。

試合は見に行けなかったけど、確かサッカーも準決勝までいったんだよな。

女子バスのみんなも応援してくれているし頑張らないとな。


試合開始前。

コーチと作戦内容の最終確認を行い俺達はコートへと向かった。


そして、試合開始のブザーが鳴り大歓声の中、試合が始まった。


ジャンプボールは海応寺の高橋。

やっぱりジャンプ力も半端ない。

そして、守屋が素早くボールを拾い前線に走りこむ横谷へ。


が、うちのPGも負けてない。

パスコースを読みボールをカットした福島は走り出していた裕也にパス。

そして更に裕也から俺にボールが回されて先制点をゲット。

海応寺高校も得意とする流れるようなパスワークを見せた得点に会場も大歓声に包まれる。


「ナイスカット!!太一」

「裕也もカッコよかったよ~!」

「ナイスシューケンちゃ~ん」


先制点は取ったもののこのシュートで相手も本気になったのか、その後は海応寺高校のゴールラッシュが続くことになってしまった。

俺達もチャンスがあれば確実にシュートを放ち、第1クォーターは何とか1点差で終えることが出来た。

しかし、動きのパターンを妨害された結果、第2、第3クォーターは完全に相手ペースとなってしまった。


特に最初から全開で飛ばしたこともあり、いつも以上に疲労も溜まっていた俺や福島、裕也の動きも第2クォーター辺りからは精細を欠いた。

その為、恩田や栗田、日吉といった2年メンバと交代したが、食らいつくのがやっとの状態で徐々に点差も開いていった。


足が重い・・・・

第4クォーターに入り俺は再びコートに戻ったけど正直疲れは全然抜けない。

前日からの疲れもあるのかもしれないけど決勝常連校というのは伊達じゃない。

相手は選手層も厚くPGの守屋や点取り屋の横谷が下がってもプレッシャーは強く選手のレベルが落ちなかった。


「ケンちゃん後少しだよ頑張って!!」

「おぅ!」

「智樹!サボってんじゃないわよ!!」

「は はい~!!」


楓の声援。

そして、恩田に彼女さんの檄が飛ぶ。

恩田はまだまだ休めない様だな・・・あいつも限界近いはずなのによく走る。


フェイントを入れて切り込む福島の前に立ちはだかる島田と横谷。

裕也にもマークが張り付きうちの攻撃の起点が抑えられいつもの速攻が行えない。

恩田と俺で何とかゲームを組み立てるがゴールが遠く感じられる。


「田辺!!ちゃんと約束通り応援に来てやったんだから絶対決めろ!!」

「藤原・・・・応援に来たって・・・もう試合ほとんど終わりの時間じゃねぇかよ」

「い 色々と事情があったんだよこっちにも。とにかく勝てよ!!」


何やらよくわからないが、応援に来てくれたのは嬉しいな。

隣には森田さんと綾女先輩?


時間は後1分で点差は5点。

体力もそろそろ限界だし、このままじゃ逆転は難しい

だったら・・・難しい事を考えるのは止めだ。

シュート3本決めればいいんだけじゃん。シンプルに攻めよう。


俺は相手のパスをカットした福島からパスを受け素早くシュートを放った。


「え、おい田辺!」


早いスタートだったこともありパスを出した福島も驚いていたが、相手のチェックも追いつかなかったので、ほぼノーマークでシュートを決めることが出来た。

これで後3点。


それまで余裕だった海応寺も俺のシュートで焦ったのか早いリスタートをして再び点を取りに動いた。

が、これを恩田が見逃さなかった。

運動量豊富な恩田がボールを持った桜井に迫りボールを奪った。

パス回しをしていた時は気が付かなかったけど相手も確実に疲労が溜まっている。


「先輩!」

「頼む!」


恩田はフォローに入った裕也にパス。

そして、パスを受けた裕也はマークを集めたところでゴール右に移動した俺にパスを出した。


「人使い荒いんだから・・・・」


疲れの為か無駄な動作の無いシンプルなシュートを放つ。

ゴール下には長谷部も詰めるがボールはそのままゴールへ。

残り20秒で1点差。。。。


リスタート後、時間を稼ぐように自陣へボールを投げる横谷。

皆がボールを追う中、裕也がボールを奪い取りロングシュートを放った。

残り10秒。


「健吾!!」


って最後にこれやるか?

本当無茶しやがるなあいつは・・・でも最後のチャンス・・・決めたいな。

俺は方向転換し疲れた体にむち打ちゴールへ向かうボールを追って走り高くジャンプした。

そして・・・・


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る