アフターストーリー12 真夏のバーベキュー
夏休み中盤。
皆で夏休みの思い出をという2年生の呼びかけを受け、今日は川野川の河川敷でバーベキューをしていた。
リバーランドが出来てからこの辺りも開発が進みキャンプ場とかバーベキューのための炊事施設など色々と整備されたんだよな。
「あ、瑞樹そっちのお皿テーブルに持って行ってくれるかな」
「オッケー♪」
「若菜ちゃんは飲み物の配膳お願い!あ、有坂君も一緒に!」
「うん」「了解」
「栗田君は野菜切っておいて!料理得意だよね?」
「お任せ!」
「あ、恩田君はつまみ食いしない!富田ちゃん!恩田君を見張っておいて」
「みっともないでしょ智樹!」
「暴力反対!」
「幸は美里ちゃん達と肉を焼き始めてくれるかな」
「「は~い」」
何だか張り切ってるな大室さん。
女子バスの大室さんが1年生や2年生に指示を送り場を仕切っている。
というか仕切り上手だよな。
村田さんが次期キャプテン候補とは言ってたけど頷ける。
リーダーシップがあるというか何とも頼もしい感じだ。
バーベキューの参加メンバーはバスケ部とテニス部、それにメンバーの知り合いも呼んで良いことになっていたので中々の人数のイベントとなっている。
ちなみに引率ということで相良先生とバスケ部とテニス部のコーチ陣も参加しているけどさっきからビールを飲んで盛り上がっている。
一応生徒の監督という名目で来ているはずなんだけど・・・
ちなみに何でテニス部と合同なのかというと、幹事の栗田と仲が良いテニス部の有坂という子が親睦会の計画を立てていることを聞いて栗田から合同開催を提案したんだとか。なんでも人数多いとバーベキュー場の割引が利くらしく。
俺達にしてもテニス部は結城や渋川さん、大崎さんと見知ったメンバーも居るし大歓迎だ。
---------------------
ランチも兼ねて開始されたバーベキュー。
大室さんを中心に1,2年が本当良く働いてくれてる。
「田辺先輩 楓先輩 お疲れ様です。お肉持ってきたんでどうぞ!」
「ありがとうな。大室さん達もちゃんと食べなよ」
「見えないところで食べてるから大丈夫ですよ♪」
大室さんと鮎川さん。それに栗田の幼馴染3人組。
仲いいよなほんと。
「先輩・・・来年は僕たちが絶対優勝します」
「おぅ頼んだぞ栗田。でもまぁ湿っぽい話は良いから今日は楽しめな」
「「はい!」」
全国大会決勝。
残り時間数秒で放った裕也のロングシュート。
ゴールにはわずかに距離が足らず、それを俺が補う形で空中で拾いゴールに押し込んだわけだけど・・・少し時間が足りなかった。
試合終了のブザーの方が早かったんだ。
後もう少し時間あれば俺達が優勝できていたわけだけど・・・負けは負けだ。
もちろん悔しかったけどやるだけの事はやった。
後は後輩たちが引き継いでくれる。
・・・な~んて少し真面目な事を考えていると明るい楽し気な声の酔っ払いに絡まれた。
「健吾、楓。こっち来て色々話そうぜ」
「そうそう♪一緒にお話しましょ~」
肉や野菜よりもお酒な感じで結構前から飲んでいるコーチ陣と相良先生。
完全に出来上がってるな・・・
普段真面目な三上コーチまで、テニス部の陣内コーチと何だか楽し気に盛り上がっちゃって止める感じなさそうだし。
ちなみに陣内コーチは渋川さんのテニスクラブに所属していて、委託を受けて部活も見てくれてる中々のイケメンさんだ。
「亮兄、雫姉。2人とも一応引率だろ?」
「細かいことは気にしないの"夏休みの思い出"作りなんでしょ?
あ、裕也と綾子達もこっちきなよ!」
裕也、それに村田さんも露骨に嫌そうな顔すんなよ。
一緒に亮兄と雫姉に絡まれようぜ・・・
「き・な・さ・い・よ・ね」
「「はい・・・」」
ほら叱られた・・・怖いよ雫姉・・・
とか思ったけど、実際のところ雫姉たちの話は大学バスケの話が中心で意外にも真面目な話。
もしかしたら敗退した俺達に次の目標を見せようとしてくれていたのかもしれないな。
まぁ同じ大学に進学してバスケ部に入った小宮先輩や恩田先輩の活躍など気になる情報の他に亮兄と雫姉の惚気話といったどうでもいいネタも間に挟まれてたりはしたけどね。
まぁそんな感じで普段あまり話をしないような雑談をしたり、川遊び、ボート、釣りと皆で楽しいひと時を過ごすことが出来た。
そんな中、楓と2人河原の大きな石に腰かけていると、食事をしたバーベキューエリアで何かを探すような人影が見えた。
ん?あれ大室さんだよな。
何してるのかな。
「どうしたのケンちゃん?」
「ん、あぁあれ。何か探し物かな」
「小春・・だよね。どうしたんだろ。何か落としたのかな?」
バーベキューをしていた炊事場の辺りで大室さんが下を見ながら何かを探す様に歩き回っている。
「そろそろ暗くなってきたし探し物なら手伝った方がいいんじゃないか?」
「うん。そうだね。ってちょっと待って!」
歩き出そうとしたところで楓にシャツの裾を引っ張られた。
「ん?どうした急に」
「あれ見なよ。もう他に手伝ってくれる人が来たみたいだから♪」
「ほぉ~」
大室さんのところに一人の男子が近づいて行って話をしている。
確かテニス部の有坂君が連れてきた子だったよな。渋・・なんだっけ。
まぁでも有坂君の友人なら大室さんと同じ2年生かな?
楽しそうに話してるし一緒に探し物を始めるみたいだ。
知り合いなのかもしれないな。
「小春も何だか楽しそうにしてるしお邪魔しちゃ悪いかも♪」
「だな。ここは若い者同士に任せましょうかね」
「もう ケンちゃん年寄りっぽいよ」
------------------
その後、暗くなってきたところでみんなで花火を楽しんだ。
川野辺神社のお祭りで行われる大掛かりな花火も綺麗だけど、こういう花火も風情があっていいよな。
「綺麗だね」
「あぁ」
楓と2人。しゃがみこんでの線香花火。
暗闇の中に瞬く線香花火の火花が綺麗だ。
奥の方では1,2年生たちが楽し気に花火を楽しんでいる。
栗田、恩田、日吉、横山、堀田・・・それに平野含め1年生も結構入ったし来年こそは優勝目指して頑張って欲しいな。
俺も・・・部活引退なんだよな・・・・そう思うと何だか少し寂しいな。
ちなみに花火の後は、相良先生からのお言葉で本日のバーベキュー大会も終了となった。
今年から2年生の担任をやっているだけあって、結構酔ってるように見えたけどしっかりした言葉で最後を締めてくれた。
相変わらず夫婦仲は円満らしく、先程も旦那様(相良さん)がカッコいいスポーツカーで迎えに来ていた。
子供が出来たのではという噂も聞いたけど、単に幸せ太りという話も・・・
実際どうなんだろうか・・・
片付けを終え、皆で路線バスに乗りそれぞれの地元へ。
俺や楓と同じく川野町方面への向かうメンバーが一番多かったけど、皆遊び疲れたのか席に座ると寝息をたてるものも多かった。
「楓も疲れたなら寝てていいぞ。着いたら起こしてやるよ」
「ありがと。本当今日は楽しかったよね」
「そうだな。部活のみんなでこういうのってなかったもんな」
「うん。企画してくれた栗田君達には感謝だね」
「そうだな。部活は引退かもしれないけど、会えなくなるわけじゃないし、またみんなで集まろうな・・・・って寝てるし」
***************
今回のバーベキューは「あなたの事が好きになったのかもしれません」の15話で大室が語っているイベントとなります。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます