アフターストーリー10 -全国大会へ④-

翌日。

俺達は1回戦で相手に20点差という圧倒的な攻撃力を見せた西東京代表の多摩通信学園との試合にのぞんだ。

3年でPGの小室にSFの宇都宮、SGの木根を中心としたスピードのある攻撃型のチームだ。また選手層も厚く松本や浅倉、西村、北島、山田といったメンバーも昨日の1回戦では攻撃力の高さを見せつけていた。

何で今まで無名だったのかは謎だけどデータも少なく正直戦いにくい。


「相手は攻撃力もある強敵だが、今日は女子バスの為にも絶対勝つぞ!!」

「「おぉ!!!」」


先発は福島、長谷部、裕也、由良それに俺の3年生5人。

ジャンパーはもちろん川野辺高校1の長身の長谷部なんだが・・・


「ふん」


長谷部より頭一つ高く飛んだ相手センターの山田がジャンプボールを制した。

そして、ボールは落下地点を読んでいた小室が素早く拾い、木根、宇都宮と繋ぎ先制点を奪った。


「凄いなあの連携。前の試合で速攻型のチームってのはわかっていたけど見るのと実際に試合をするのとじゃ全然違うな」

「全くだ。予定通りゾーンで固めるが田辺と清水は隙を見て攻め込んでれ」

「「了解!!」」


そんな裕也のリスタートで試合再開。

ボールを受けた福島は速いパス回しで俺にボールを送る。

が、相手も俺達と同じくゾーンを組みこちらのスピードを潰しに来た。

それなら・・・


「裕也!」


俺はドリブルで切り込み相手ディフェンスが集まってきたところで、カットインしてきた裕也にボールをパス。

パスを受けた裕也はボールをタップし更に背後から走りこんできた福島へ。

ボールを受けた福島は確実にゴールを決め同点。


「太一カッコいい!!」

「ナイスアシスト裕也!」

「いいぞ!!ケンちゃ~ん」


楓達の応援は嬉しいけど少々照れくさい・・・

あ、多摩通信学園の選手がこっち見て睨んでる。

・・・そういえばあいつら確か男子校だよな。


ちなみにさっきのプレイは小宮先輩達が得意としてたセットプレイの1つ。

先輩達のプレイは福島と裕也が引き継ぎ、2人を起点として様々なパターンが用意されている。

ただ、その場その場での状況判断も必要だしパターンを読まれたときのリスクもあるので、本当は決勝まで温存しておく予定だったけど正直それほどの余裕もないということでコーチからも使用の許可は得ていた。


「上手くはいったけど・・・そう何度も使えなさそうだな」

「だな。あいつらのディフェンス考えると使えるパターンも限られてくるしな」


一進一退の攻防を繰り広げるものの20点差勝利は伊達ではなく多摩通信学園の猛攻の前に徐々に攻撃の機会が失われ守り中心の試合運びとなってしまった。


その後、第2、第3クォーターと劣勢になりながらも何とか点差はギリギリ1桁代で保ってはいたけど、相手の攻撃力は強く俺達は守るので精一杯。


途中、長谷部と由良に代わり高田と栗田、それからスポットで日吉や堀田が投入されるも決定打にはならず試合は硬直状態となっていった。


そして、第3クォーター後半。

疲労気味の俺と裕也が下がり体力を温存していた吉見、恩田が投入された。


「先輩こっち!」

「頼む恩田!」


視野が広く運動量が豊富なオールラウンダーの恩田と3ポイント含めシュート成功率が高いシューターの吉見。

この2人の活躍もあり広がりつつあった点差も徐々に少なくなっていった。


第4クォーター。

盛り返してはきたけれど吉見も恩田もマークが厳しくなり追加点が中々取れない状況となっていた。

そして、今現在の点差は4点で残り時間は1分。

俺も相手パスをカットしてボールと取ったものの相手ディフェンスが堅く中々切り崩せず時間ばかりが過ぎていた。


「くそっ時間が・・」

「田辺!」


と、相手マークを外した吉見が逆サイに走りながら手を上げてボールを要求してきた。


「頼む吉見!」


俺は相手ディフェンスを躱し吉見にパスを送った。

パスを受けた吉見はゴール下ではなくスリーポイントラインの外側に自ら出てシュート。


[シュパ]


放物線を描きながらボールはリングへ。


「ナイスシュー優君!!」

「いいぞ 吉見!!」

「もう一本!!」


大崎さん達をはじめ大きな歓声に沸く体育館だが残り時間は後15秒。

まだ1点負けている。

多摩通信学園のリスタートも時間を見越してか気持ち遅く思える。

ここまでか・・・・


「田辺先輩!!」


と、声の方を見るとリスタートした相手のボールに飛びつくような形でカットした恩田がいた。

恩田は倒れこみながらもボールを弾くようにして俺にパスを送ってくれた。

最後のチャンス無駄にできない。

俺は恩田からのパスを受けると相手ディフェンスをかわし素早くシュートを放った。

皆が見守る中シュートは決まり逆転。


多摩通信学園も今度は素早いリスタートをしようとしたが、ここでタイムアップとなった。

勝った・・・のか?

って恩田は?


「流石先輩っすね~」

「大丈夫なのかよ。結構派手に倒れこんでたけど」

「それなら「智樹!!大丈夫なの!!」


恩田の声を遮るように客席から女性の声が・・・あれって確か恩田の。


「心配ありがとな優子♪カッコよかった僕?」

「そ そんな事より怪我とか大丈夫なの?」

「心配しなくても大丈夫だよ。受け身もちゃんと取ったしね」

「バカ!心配するの当たり前でしょ!!そ それと・・・カッコよかったわよ」

「ほ ほんと?いや~まいったなぁ~」

「ちょ 調子にのらないの!ほらみんな待ってるでから早く行きな!!」


何ていうか俺と楓とは違った意味で凄いカップルだな・・・

でも・・・今日の試合に勝てたのは最後まで諦めなかったあいつのお陰かな。



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本人の言う通り恩田は特に怪我もなく、1日空けて行われた3回戦でも随所で活躍を見せ川野辺高校を勝利に導く立役者となった。

お姉さん譲りでスター性があるというか・・・練習より本番で実力を出すタイプだよな・・・・ちょっと軽いけど。。。


そして、明日はいよいよ決勝戦。

ここまで来たからには勝って大会を終えたいよな。



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後、1回全国大会編を書いて夏休みのイチャイチャ話に移ります。

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