アフターストーリー08 -全国大会へ②-

「川野辺ファイトーーー!!」

「跳べ跳べ長谷部!!」

「長谷部く~ん頑張って!!」


女子バスや学校からバスで乗り付けた応援団の声援を受け長谷部が跳ぶ。

ジャンプボールに競り勝ち弾かれたボールは素早く落下地点に走りこんだ福島がキャッチ。

が、ドリブルに入ろうとしたところで青葉のエース矢代が立ち塞がった。


「福島!前回の雪辱だ。今日は僕たちが勝たせてもらう」

「ちっ矢代」


マークに付いた矢代との勝負を避けたのか福島はドリブルに入るモーションを見せつつ裏手を走る恩田にパスを送る。

去年の試合では体力を温存した後半戦から出場した福島が矢代に競り勝ち僅差で勝利したが元々の2人の実力はほぼ互角。

今日もどちらがゲームを支配するかが勝負の鍵か。


「先輩!」


フェイントを織り交ぜゴール下に切り込んだ恩田がシュートモーションからのパスで離れた位置に駆け込んだ吉見にパスを送った。

そして吉見も冷静に3ポイントを決め先制点。


「優君 ナイスシュート!!」

「いいぞーー優!!!」


大崎さんと結城、それに渋川さんだ。

学校のみんなと応援に来てくれたんだな。


今日のスターティングメンバーは、福島をPGにおいてセンターに長谷部。そして吉見、由良、恩田の5人。俺と裕也、それに栗田や平野は体力温存ということで後半戦から勝負に出る作戦だ。


前半戦となる第1クォーター、第2クォーターは福島と矢代が牽制しあう中で恩田がゲームをコントロールし得点を重ねた。

が、青葉も昨年も活躍していた2年の冨永や新加入の1年柚木が良い動きを見せ点差は開かずほぼ互角の戦いとなった。


そして、わずかながらにリードした状態で迎えた第3クォーター。

恩田と由良に代わる形で俺と裕也がゲームに参加しリズムを変えた。


「ケンちゃん!いけーーー!」

「裕也ファイトーー!」


声援を受け恩田に代わった裕也がゴール左サイドに自ら切り込みシュートを放つ。

が、冨永のディフェンスで体制を崩しボールはリンクに弾かれる。


「リバウンド!!」

「くっ」


俺と長谷部が跳ぶも先に走りこんでいた青葉のセンター吉竹がボールを取りセンターライン近くに居た柚木へ。

柚木はそのまま手薄になっていた俺達のゴールへ走り込みゴールを決めた。

青葉学園側の観客席で大歓声が起こる。

やはり簡単には勝たせてはくれない。



第4クォーター。疲れが見えてきた福島と吉見を下げ恩田と栗田がコートに入った。矢代には裕也がマークに付き俺と恩田でゲームをまわす。

両者の力はほぼ互角で同点のまま残り1分を切った。


「平野!」


シュートコースを塞がれた俺は、やや後方に走りこんできた平野にパスを出した。いいポジショニングするよなあいつ。


「いけー平野!!」


美里ちゃんか?女子の声援が聞こえる中、平野は体制を崩しながらもゴール下に向かいシュートを放った。



試合終了。

結局、平野のシュートが決勝点となった。

前評判では毎年好成績を残している青葉有利とされていたけど、それを覆し勝利することが出来た。

正直今までうちの高校はあまりマークされていなかったかもしれないけどこれで注目を浴びるかもしれないな。


「やったね!ケンちゃん。初戦突破おめでとう」

「ありがとう。次は楓達の番だな。明日の試合は俺達も応援に行くからな」

「うん♪」


楓達女子バスの初戦は明日の午前中。

相手は雫姉の母校で優勝候補の一角。

当然楽な試合じゃないと思うけど・・・・




-------------------------

「ふぅ~ でも流石全国大会だな。緊張感が半端なかったな」

「裕也が?そんな風には見えなかったけどな?」

「ひっでーなぁ健吾。俺も結構緊張してたんだぜ」


試合を終えて宿舎に戻った俺達は風呂に入り疲れを癒していた。

正直、裕也の言う通り普段の試合の数倍疲れた。

相手が強いのはもちろんだけど応援してくれる人も多かったからな。

嬉しい反面緊張した。


「でもやっぱり矢代は上手いな。勝てたのはあいつを福島が上手く抑えてくれたところは大きいぜ」

「まったくだ。俺なんて第4クォーターだけだったけどあいつを抑えるのは結構きつかったぜ」

「いやこっちもギリギリだよ。あいつはやっぱり凄いよ。大学は東京に出てバスケ続けるって言ってたから、またどこかで会うかもしれないな」


大学バスケか・・・

小宮先輩や恩田先輩、それにコーチたちは川野辺大でバスケ続けてるけど裕也は専門学校行くって言ってたし福島も横浜市内の大学志望。

みんなバラバラになるんだよな。

なんて少し感傷的な気分に浸っていると


「そういえば、今日は平野と恩田も大活躍だったよな」

「そうそう特に平野のゴールで試合決めたしな」

「いえ、あれはパスが良かったからで・・・その」


平野って結構謙虚なんだよな。

技術もあるしもう少し偉ぶってもいいとは思うんだけど。


「そんなことないさ。いいポジショニングだったし実力だよ」

「あ ありがとうございます田辺先輩!」

「そんな固くなるなよ。あ、そういえば美里ちゃんも声援してくれてたよな。もしかしてそのおかげあるのかな?」

「え!美里が僕を応援してくれてたんですか?」

「って健吾!あの試合の中で女子の声援を聞き分けたのか?」

「あぁ俺って耳は良い方なんだ。楓の声援もわかったし浜野さんが裕也を応援してるのも聞こえたぞ。あ、もちろん村田さんや大崎さんもな」

「・・・・凄いなお前。めちゃ余裕あるじゃん」


いやいや。余裕とかなかったけど・・・聞こえてたの俺だけ?

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